運命の人なんかじゃない。[TH] (ページ32)

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ソクジンオッパは音楽を誰よりも愛してた。

だからなのか、有名なピアニストの子供である私が窮屈に感じていたことにすぐ気づいてくれたのかもしれない。

JN「はじめまして、キム・ソクジンです」

ソクジンオッパがオンマの弟子として初めて家に来た日、あ、オンマに見捨てられたって思った。オンマに言われてピアノを弾き始めてそれなりに上手くなったものの、オンマが望んでるほどにはなれないと思った矢先にオッパが来たから。

「…はじめまして、Aです」

JN「聞いてたよりも大人っぽいね。ピアニストよりもモデルみたいだ」

だから最初はオッパのことが好きじゃなかった。私が必死に練習してもオッパはその上のさらに上にいる。天才って、こういう人のこと言うんだなって思った。

オッパが来てから数日は全く話をしなかった、というかむしろ私が避けていた。オッパが学校から帰ってきたら、自分のピアノの練習室にこもってイヤホンして入ってくんなオーラをすごい出したりもした。

けどある日、オッパに私の秘密が見つかってしまった。

JN「バレエ好きなの？」

パソコンでバレエの舞台の映像を見てるを見られたのだ。こっそりオンマがいない時を狙ってたのに、迂闊だった。

JN「そういえばたまにバレエの曲練習室で流してるけど…もしかして、ピアノよりもバレエがしたいの？」

ストレートで聞いてきて思わず言葉が詰まる。誰にも言えなくて自分で抱えてたものを一気に見られた感じがしたから。

JN「それならピアノなんかやめてバレエ始めなよ」

「っそれが出来るならとっくにしてます！けど…」

私はオンマの娘だから。ピアニストのオンマみたいに上手くなって、大会にでて実力を認めてもらわなくちゃいけないから。じゃないと、娘である意味がない。

JN「なんでバレエがしたいの？」

またいきなりの質問。とりあえず映像を見ていたパソコンの画面をオッパの方に向ける。それはある人のソロダンスの映像だった。

「…パク・ジミンって言うんです。この人の踊りが本当に好きで…一緒に踊りたいって思ったんです」

息を呑むほど綺麗に踊る人。たまたま動画投稿サイトで見つけて一気に惹かれた。そのまま無言でその映像を見てると

JN「Aが自分に正直になれるように、オッパが手伝ってあげるよ」

ソクジンオッパはそう言ってにっこり笑った。