運命の人なんかじゃない。[TH] (ページ19)

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今日のレッスンを全て終えた後、待ち合わせに向かうために棟を出る。この大学は本当に広いから移動するだけでも一苦労だ。移動する間手持ち無沙汰だからとポケットからスマホを取りだした瞬間に振動した。

YG『A』

「あ、ユンギオッパ。もうジミナと会いました？」

YG『ああ』

いつも通り低い声だけど、いつもより少し不機嫌な声のトーン。え、なんかしたかな私…。

YG『…ジミナから聞いたけど、前のレッスン調子悪かったらしいな。テヒョンのせいで』

「あ、いや…それはもう解決しました」

YG『そうじゃなくて、まだ吹っ切れてないってことだろ』

その言葉に心臓がドキリとする。

YG『…まだ苦しいなら、踊らないほうがいいんじゃないか？今回のは俺やジミナがいるとして、次は』

「踊ってないと、また思い出しちゃうからダメなんです」

踊れなかった間、何回も何回も思い出して辛かった。手足に力が入らなくて、初めてジミナとパートナーになれた時だったのに、ジミナにもたくさん迷惑かけた。

「それに、今は近くにいてくれる人がいるから大丈夫です」

YG『ああ、今日会う日か。色々やってあんま夜更かしすんなよ』

「しないですよ、なんですかそれ」

軽く笑ってお互いにじゃあと言ってから通話を切る。電話しながら歩いていたらいつの間にか待ち合わせ場所の中庭についていて、壁に背を預ける。

そういえば、ここテヒョンが告白されてた場所だ。最悪だったけど。

あの時は冷たくて何にも思わない人かと思ってたけどそうじゃないらしい。素直で、正直な人。ダッカルビ作った時もそうだし、さっきの練習中もそう。意外と感情豊かな人みたい。まあそうじゃないと演劇なんて出来ないか。

私を呼ぶテヒョンの顔を思い出す。

「お待たせ、A」

けどそれは私を呼ぶ別の声にかき消えた。