クリーニング ページ4
「Aいい加減酒飲みすぎじゃない?」
バーのマスターがAの前に置いたカクテルを取り上げグッと飲み干す。
喉の奥にべっタリと張り付くような、ドロっとした甘みが喉を過ぎていった。
よくこんな甘ったるいのが飲めるなとあきれて隣を見やれば、完全に酔って出来上がった彼女がもーぅと頬っぺを膨らました。
「イルミー……んもぅ、なんでのんじゃうのよー。
ますたぁ……わたし、のどかわいたぁ」
へらりと笑ったAはカウンターに顎を乗せた格好のまま上目遣いにバーのマスターを見た。
ご く ん 。
10秒くらいかけてゆっくりと空気を飲みこんだマスターはそのまま視線を逸らし、オレに視線をよこした。
「ほら、マスター困ってんじゃん。もうでるよ」
控えめに水を置いたマスターに会計を済ませたオレは何故かAの分を払い(そもそもオレが飲んだのはせいぜい最後の1杯のみで彼女は数十杯飲んでいた)、彼女はトイレに向かっていた。
仲よろしいんですね、とマスターはグラスを拭きながらオレを同情した瞳で見た。
彼女にあれほど見つめられた人でこれほどに冷静に対話できる人はなかなか珍しい、とオレは感心した。
「ねえねえ、お姉さん。
さっき飲み足りないって言ってたよね、俺らも飲み足りないんだけどさ〜、この後もう一軒店行こうよ」
俺ら結構金もってるしさと馴れ馴れしくAに話しかけた傷んだ金髪の男は、馴れ馴れしく彼女の肩を抱き、赤い燃えるような髪をひと梳きした。
「ふふ……あなただぁれ?」
綺麗な瞳をキュッと細めたAは甘ったるい声で男に答えた。
アルコールが入ったせいでふらつく足元でかなり際どいラインまで入ったスリットから白く長い脚が覗き、男たちはそれを食い入るように見つめた。
《 い る み た す け て 》口パクでそう言ってきたAは未だにとろんとした目のままフッと笑って見せる。オレは深くため息をついてそこに近付いた。
「ねえ、ダレに許可を得て話しかけてんの?」
そう言えば少し殺気が漏れていたからか一瞬で消えていった虫たち。
その様子を見たAは恍惚とした表情でオレの胸元に背を預け、ペロリと唇を舐めた。
「ハァー、やっぱり。強いオトコっていいわ」
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作者名:クルミ | 作成日時:2021年1月19日 0時