ストーキング ページ1
「まあ！おかえりなさい。疲れたでしょう？お夕飯もお風呂も準備してありますけど、どちらからに致しましょうか？」
目の前には見知らぬ笑顔の美人な女。「新婚みたいですね？」と頬を少し赤らめて上目遣いにこちらを見る見知らぬ女。
大事なのでもう一度言おう、見知らぬ笑顔の女。
確かにここ数日得体の知れない視線を感じないでもなかった。とはいえ幻影旅団の団長であるオレは少なからずそういう視線に晒されることはあるので、深く考えなかった。
今考えればそれが悪いのだが、一応、警戒に警戒を重ね人混みに紛れオーラを調節したり、裏道に入って視線を切ったり、兎に角、今できることはしたのである。
今まで遭遇したものたちであればその存在をこちらが察知し、逆にこちら側から会いに行って差し上げる(もちろんその後処分するのだが)こともしばしばである。
現に数日前3人組のブラックリストハンター共を逆探知後1人で伸し、シャルに何かあったらどうとかくどくど言われたのである。
とはいえ、これはどうしたものかと眉をしかめた。
「クロロさん、どうかなさいました？あ、お夕飯はこの前美味しいと仰ってた夏野菜パスタとグラタンです。お好きだとお伺いしたプリンも冷蔵庫で冷えてますよ。」
そう顔を覗き込んできた見知らぬ女は、「キャッ、お名前呼んでしまいました！」と頬に両手を当てそのまま俺の方を見つめる。
今まで見てきた中で女優やモデルを入れてもトップを争うくらい綺麗な顔が目の前にはあった。
非正規のルートからとはいえ自分が借りたマンションの一室なのだ、何を臆する必要後あるのだ？しかし、何故か女の勢いに少し気圧され半歩後ろに下がれば、「どうされました？」とその綺麗な顔で再び聞いてきた。
「まずここは俺の部屋であっているな？」
「ええ」という返事を合図に扉を後ろ手に開けようとするも虚しく、何故かチェーンが内側からかけられていて部屋を出るという選択肢は削除された。
ならばもう、どうにでもなれと部屋の中に入り部屋中央にある黒のソファーに腰掛けた。
「ご飯、準備しちゃいますね」ふふっと微笑んだ女は嬉しそうに続けた。
「ここは正真正銘クロロさんのお部屋です。そして私はAといいます。ここ数ヶ月クロロさんを陰ながら応援してたものです！」
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作者名：クルミ | 作成日時：2021年1月19日 0時
