翻訳が機能する世界線【D.Gray-man】 (ページ35)

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百二之門ページ35

「ええっ！？ダメ！？」
自分の答えが予想外だとでも言いたげにオーバーリアクションを見せるコムイ。逆に何でいけると思ったんだ。
「ダメ、というか…自分は、教団の本職には関わらない約束だっただろう？」
それは、此処に初めて来た時に彼と直接交した約束だった。自分は忘れていないし、何だかんだで記憶力のいいコムイが忘れる筈がない。
自分としては、教団に籍を置かせて貰っているので何か手伝えることがあればとは思うが、だからこそ、この約束は守るべきであるし、必要だと思っていた。
今回言い渡された行先はパリ。ということは時期的に多分、というか十中八九【怪盗G事件】関係の仕事だろう。それはいけない。物語に直接干渉するような仕事はなるべく避けたいのだから。
しかも自分が行くとなると、きっと自動的にフレアも同伴させられる。
フレアは、ゾンビ回の後に科学班によってある程度のステータスが調べられている。その際に魔法が使えることも判明しているので、戦闘能力が皆無の自分はコムイから「何かあった時の為に、基本はフレアと行動するように。」と、軽くだが言われていたのだ。今回の仕事の危険度を考えると、必ずフレアの力が必要になる。
しかし、フレアも自分と同様、異世界から来た。彼が物語に干渉し過ぎることも許されないのだ。

そこまで考えて、自分がさらに渋い顔を浮かべる。するとコムイが苦笑いしながら、先の自分の質問に答えた。
「まぁ、それはそうなんだけどね…どうやらファインダーの殆どが捕縛されちゃったみたいで……。」
「何してんだよ…。」
ポリポリと頬をかきながら困った様子で話すコムイに、つい自分は無意識にいつもより砕けた言葉を零した。
「まぁ、そんなわけでさ、人手不足なんだ。白桃くんとの約束を忘れたわけじゃない。けれど、これは君を信頼して頼んでいるんだ。…頼まれては、くれないかい？」
そう言って不安げにこちらを上目遣いに見上げ書類を自分の前へと改めて差し出すコムイ。そんな風に言われては、断るものも断りにくい。きっと分かってやっているのだろう。
自分はただ物語を見守るだけだ。登場人物になってはいけない。理屈では分かっているんだ。
「………分かった、行こう。」
それでも、甘んじて引き受けてしまうのは、きっとその意志すら既に弱いのだろう。
だから自分は、答えを口にするより先に差し出された書類を無意識に受け取っていた。

こうして、自分達は教団に来て初めて"任務"へと向かうのだった。