翻訳が機能する世界線【D.Gray-man】 (ページ23)

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九十二之門ページ23

彼が何を思っているのか知りたいと思う反面、そこまで深く関わってはいけないと感情をセーブする。
ふう、とまた軽く溜息をついて、まだ黙り込むリナリーの顔色を横目で伺う。そんな彼女から見えたのは、「悲しい」の色であった。
自分はそれを見た瞬間、少しだけ息が詰まるのを覚えた。
(嗚呼、そうだな。悲しいよな。)
変わってしまうことは、悲しいことだ。

無意識だった。自分はついリナリーの頭に手を置いて優しく撫でた。
「、！」
「…あ、悪い。」
気付いた時には時すでに遅し。流石に女性へ急に触れるのは不躾だったと自己嫌悪に浸る。しかし、リナリーは優しい。すぐに愛らしく微笑み、首を左右に振って「ううん、大丈夫。」と言ってくれた。
「でも、どうして？」
不思議そうに見つめてくる瞳に、少し戸惑い指で頬を掻く。「あー…」としどろもどろになりながら言葉を探すが、途中でやはり多く語る必要はないと思い、あくまで普通を装って言う。
「まぁ、なんだ。…ラビには何か、菓子でも買って帰ろうか。」
「！…うん、！そうだね！」
悲しみの色に染まっていた表情が花のように色付いていくリナリーの様子を見て、少しほっとする。
せめて、せめて彼らが少しでも穏やかでいられるように。
(これくらいは、許して欲しい。)

「二人共、何の話してるんですか？」
「嗚呼、今リナリーとラビに土産でもって話を…ってうわ。」
漸く言い合いをやめたらしいアレン達が此方に話しかけてきたので視線を其方へと移すと、髪がボサボサに、服がボロボロに乱れた二人が立っていた。
「この数分でどうしてそこまでそうなる。」
「神田が悪いんです。」
「モヤシが悪い。」
自分の問いに、二人は声を揃えて答えた。それがなんだか可笑しくて、リナリーと自分は目を少し見開かせた後、プッと吹き出してから大きく笑った。なお、自分は相変わらず表情筋は殆ど動いていなかったようだが。
「ラビだけじゃダメです！クロウリーやミランダにも買っていきましょう！」
アレンの提案に、神田が「…マリにも買ってくぞ。」とボソリと呟き、リナリーも元気に「兄さんや科学班の皆にも買っていきましょ！」と言った。
そんな中自分は、フレアとクロスケは何が好きだろうかとこっそり考えるのであった。

「君達！何故何時までもこんな道の真ん中で立ち止まっている！！」
実は自分達の先を歩いていたリンクが、自分達が立ち止まっていることに今更気付いてブチ切れながら急いで戻って来るまであと十秒。