翻訳が機能する世界線【D.Gray-man】 (ページ3)

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七十四之門ページ3

そもそも自分が異世界人であることは明かせないことが大前提なのだ。答えられることも範囲が限られているし、かといって変に怪しまれる回答も出来ない。結局自分は自分の身体的情報以外、つまり出身地や家族構成などの情報を全て「分からない」で答えるしかなかった。
素性について嘘をついてもいいとは思う。しかし、黒の教団というのは膨大なデータを手にしている。現在ブックマンも在籍しているとなると尚更だ。だからそんなことをすると此方の武が明らかに悪くなるのは目に見えている。
ならば諦めて真実を伝えるべきか。これも駄目だ。自分の全てを話すことはつまり、彼等の未来を予言出来る人物であることを証明することになる。
そんなことでは、自分が何の為に傍観を決め込んで帰る術を見つけるまで見届けようと決意したのか分からなくなってしまう。
結局、自分はクロに近いグレーでいるしかないのだ。大変、非常に心外でならないが。

何はともあれ、無事に尋問を終えた自分は色々と吹っ切れて優雅に寛いでいるのであった。
しかし、難を乗り越えたのはいいが腑に落ちないことが一つだけある。
「リンク、何でわざわざ自分を連れ出して此処で尋問したんだ。あの内容なら、教団内でも問題は無かっただろう？」
改めてリンクに向き直って聞くと、彼は不満そうに溜息をついた。
「私も、それで済むならよかったと思いました。」
「？」
訝しげな表情を見せる彼を見ながら、先程口をつけて離したカップにもう一度手を付けてダージリンを味わおうとする。
「実は、長官が君と直接話したいと仰られたのでついでということで君を連れて来たのですよ。」
「ブーーーーーーーーーーーっ！！！！！！」
「げっ！？」
予想もしなかった言葉がリンクの口から出たので、思わず口に含んだダージリンを吹き出してしまった。流石のリンクもドン引きしている。いやすまん。
「す、すまないつい……。」
「君でも取り乱すことあるんですね…ほら。」
引きつつもハンカチを差し出してくれるリンクは本当に良い奴だと思う。素直にお礼を言って受け取り、口周りを拭う。その間に彼はあっという間にテーブルを綺麗に片付けていた。優秀か。
どうでもいいことで気を紛らわせながら、まだ蒸せている喉元から何とか声を捻り出しリンクに問いかけた。
「長官…って、あの長官か？」
「ええ。」
「中央庁の偉い人っつーあの？」
「そうです。」
「………めんどくせぇ。」
前言撤回、何にも吹っ切れられないこれ。