翻訳が機能する世界線【D.Gray-man】 (ページ18)

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八十七之門ページ18

＿＿＿＿本部移転からしばらくして、アレンがノアの十四番使徒の記憶を持つ宿主であることが正式に報告された。そして、彼を教団のもとで引き続き監視し【飼う】ということも。
それにより、アレンを見る目の疑念と畏怖を以前よりも強くさせた。
ノアは人間の中でも一脱した存在であり、エクソシスト以上の力を持ち悪魔達を従わせる【本物の神の使徒】、何の力も持たない人間にとっては恐ろしい存在であった。
そんなノアの宿主がこの教団内にいる、しかもエクソシストとして。たとえ今まで仲間として幾多の戦場を乗り越えてきても、周りの人間が警戒しない訳がなかった。
自分はこの聖戦とは無関係の立場に居るということもあり、コムイから正式にその話をされることは無かった。とはいえ、アレンの隣を歩けば嫌でも分かる。知ってしまう。

アレンから昼食に誘われ、リンクは勿論、ジョニーも加えて並んで歩くも、周りの視線が嫌に刺さってきた。
ヒソヒソと小声で相手の耳に入らぬように話しているようだが、丸聞こえである。
「あれがノアの…」
「いつ覚醒するか……」
「前々から気味が悪いとおもっていたんだ…」
「やっぱり…」
何とも不快極まりない。こういうのは使用言語が英語で意味を理解できなかったとしても本当に不快である。そんな腫れ物に触るように扱われたら、精神がより不安定になるに決まっているというのに。覚醒しなければ大丈夫だというのに、何故自分達の方から覚醒しそうな方へと誘導していくのか。愚かだな。嫌なら放っておけばいいのに。
(低脳。)
しかし、自分のこの思いを顔に、言葉に出してはいけない。不快とはいえ此処で事を荒立ててよりアレンの待遇と自分の身を不安定にさせるなど言語道断。余計面倒くさいことになる。加えて、物語に深く影響してしまいような行動をしてはならない。
だから、耐えるしか無い。
(それに、)
自分は、アレンと約束をした。自分が彼の羽を休める場所になると。

未だ遠くからヒソヒソと聞こえてくる陰口にふぅ、と息を吐いて頭を抱えた。陰口を言う奴らに対して頭に浮かんだ汚い言葉を一つ一つ冷静に掃除していく。自分のことは心底どうでもいいが、アレンのことを悪く言う言葉にキレそうである。理性を保つので手一杯だ。自分はここまで短気だっただろうか。自制心を持てないのは頂けない。自分は溜息をついた。
「大丈夫ですか？」
アレンが心配したように自分の顔を覗き込んできた。