翻訳が機能する世界線【D.Gray-man】 (ページ11)

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これは、夢だ。そうして自身の辺り一面に赤い羽根が舞い落ちる。
そんな自分を見つめる、翠眼が二つ。

[貴方は、何を望みますか？]

[貴方は、何を想いますか？]

[貴方は、誰を愛しますか？]

[どうか教えて、貴方の願いを。]

美しく長い赤髪を風に靡かせて彼女は一つ一つと丁寧に言葉を零していく。その表情は、何処か優しい。

『＿＿＿＿何故？』

『何故願わねばならない。』

『何故信じてもいない、神に願えと？』

皮肉な言葉に彼女は微笑み、首を振る。

[＿＿＿＿違うわ。願うのは、]

[自分自身に。]

そして、自分を真っ直ぐに捕らえて離さなかった。その翡翠はまるであの、琥珀の瞳と同じだった。

[言って、言葉で、貴方の願いを。]

微笑む彼女に、目を奪われていく。

[そうすれば、私は貴方に応える。]

逸らせない。

[貴方の力になる。]

[どうか、言って。]

[言って。]

その声は、泣いているように聴こえた。

『＿＿＿＿まだ、生きたい。』

零れた言葉は、反吐が出る程惨めったらしいものだった。そんな言葉に、彼女はまた朗らかに微笑んだのであった。

[＿＿＿＿その言葉を、待っていたわ。]

赤い羽根が、優しく自分の身体を包み込んでいく。

そうして、呑まれ、癒されていく。

そして俺は、眠りについた。

「今はまだ＿＿＿＿おやすみなさい。」

最後に聴いたのはあまり馴染みの無い、琥珀の少年と同じ日の国の言葉であった。