三十九之門 ページ10
神田に罵倒されどつかれ、自分は少し黙りこくる。
彼は基本、女性を除いては誰にでも容赦が無い。
鍛練ともなればそれはもう配慮なんぞお構い無しに牙を剥く。だから、こんな形(ナリ)の自分を彼は喧嘩や口論となれば力でねじ伏せてくると思っていた。
そんな彼の気分を悪くさせ、返ってきた暴力はたったのこれっぽっちのゲンコツだった。
そりゃ、それなりの衝撃はあったけど、一瞬だけで長引く痛みではなかった。
(さっきから思うが、これは本気と書いてガチで優しくされているのだろうか。)
なるほど、つまるところやはり彼は。
「神田は優しいのだな。」
試しに、そんな言葉を言ってみる。嘘では無い、本当にそう思っているのだ。
自分はきっと、この世界で一番この世界に詳しい。理解していない、出来ない点も多いが、少なくとも神田も知らない沢山のことを知っている。
だからこそ思う、彼は優しい。本人が気付いているかどうかは別として。
「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇよ、えのき野郎。」
また、顰めっ面で神田が答える。えのきってなんだえのきって。そんなアレンのようにわざわざひょろっちい食べ物で渾名を付けてくれんでもいいだろう。
けれどそんな彼に、ほんの少しだけ笑みがこぼれた。
やはり、神田は優しいみたいだ。
「ふっ、」
「おい、何笑ってんだテメェ。」
「笑ってないぞ。」
コノヤロウッ、と神田に胸ぐらを掴まれるがやはりそこまで苦しくない。
手加減されている、それは自分が彼より弱いからかそれとも。しかし神田という男は、大前提としてそもそも本気で嫌いな相手とは口すら聞かないだろう。
そう考えると、自分はそこまで嫌われていないし、なんなら優しくされているのだと思う。そう勝手に捉えることにする。
本来自分はポジティブ思考なのだ。基本何でも自分のいい方に考える。
(だって、その方がずっと楽しい。)
「あぁっ、神田!白桃になにしてるんですか、!?」
「、チッ」
突然のアレンの登場に、神田は自分の胸ぐらを掴んでいた手を離した。
「神田、舌打ちは良くないぞ。」
「うるせぇえのき、」
「ああそれ確定なのか。」
宥めるために声をかければ毒を吐かれる。自分に罪は無いはずなんだが不思議だなぁ。
(まぁハシビロコウよりは何か可愛いからいいか。)
「えのきって、彼にまで変な渾名つけないでくださいよ!」
「んなの俺の勝手だろうが。」
「安心しろ、アレン。ハシビロコウよりはマシだから。」
「白桃は何の話してるんですか!?」
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雪音(プロフ) - 餓羅鑼さん» コメントありがとうございます。マイペースですが更新頑張っていきます。 (2021年6月14日 6時) (レス) id: 8e077a453c (このIDを非表示/違反報告)
餓羅鑼 - 続編万歳ですっっ!!更新楽しみにしてます! (2021年6月14日 0時) (レス) id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪音 | 作成日時:2021年6月13日 21時