七十二之門 ページ49
自室に戻った自分は、深い溜息をついた。
壊滅事件前に使っていた部屋はボロボロになってしまったので、今はまた別の部屋を使わせてもらっている。間取りは以前と変わらないので、生活に問題は無かった。
変わったことは、ルームメイトが増えたことである。
「〔クロスケ〜、ごーはんー！〕」
「カアァッ！」
バサリと漆黒の羽を広げ、浮遊するフレアと共にキャッキャッと遊んでいる。
鴉と精霊が飛び回る、それを傍観する平凡な人間が住まう部屋。傍から見ればかなり異様である。
クロスケとは、鴉の名だ。怪我していた傷もすっかりと治り、看病していた間に自分とフレアにかなり懐いてしまった。群れに返そうとも思ったのだが、直ぐに此方へ戻ってきてしまうので、諦めて自分達が飼うことになった。ずっと鴉と呼ぶ訳にもいかないので、適当にクロスケと自分が名付けたのである。
フレアは、契約精霊として共にいることが当たり前ということもあり同じ部屋となった。
この世界でも精霊という存在は珍しいということもあり、自分が目を離すと何をされるか分からないこともあるので、それに関しては特に問題は無い。
随分と賑やかになった室内。自分は一羽と一匹を見守りながら、コムイから告げられたことを思い出す。
(中央庁からの尋問、ねぇ。)
決意をして直ぐにこれか。はぁ、と二度目の溜息が零れる。
自分という存在は、この世界において不安定なものだ。疑われても仕方ないことは分かっている。しかし、自分が恐れているのはそれにより運命の歯車が狂うことである。
下手な答えをすることは出来ない。端的に言ってしまえば非常に面倒くさい。
そもそも自分は元々口下手なのだ。正しいことを上手く伝えられるかすらも危うい。これでますます疑いをかけられては余計に面倒なのだが、避けて通れる道などない。
「………まぁ、やれるだけやるか。」
それしか自分には選択肢などない。
「〔？何が？〕」
クロスケと遊んでいたフレアが此方を向いて首を傾げる。自分はそれに、三度目の溜息をついて答えた。
「任務遂行？」
自分で決められることなど限られている。なるべく人に身を委ねるしかないのだ。
「あーーー何でこんなにも行動が制限されなくちゃいけないんだ…心底ウザってぇ。」
「〔急にどうしたんだよ？〕」
「性にあわないことをするのは気が滅入るって話さ。」
「〔ふーん？〕」
「カァー！」
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雪音(プロフ) - 餓羅鑼さん» コメントありがとうございます。マイペースですが更新頑張っていきます。 (2021年6月14日 6時) (
レス) id: 8e077a453c (このIDを非表示/違反報告)
餓羅鑼 - 続編万歳ですっっ！！更新楽しみにしてます！ (2021年6月14日 0時) (レス) id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪音 | 作成日時：2021年6月13日 21時
