六十四之門 ページ37
もう少しで部屋の突き当たりに辿り着く、そこでようやく見つけた。
〔 寂しい 〕
「寂しいのか。」
言葉と同時に掴んだ棚にひっそりと置かれた小さな瓶。薄暗くてよく分からないが、赤い硝子で出来ているらしい。よく見ると、中身が淡く光っている。暫くすると、瓶を掴んだ掌にじんわりと不思議な熱が伝わってくる。
(これは……何だ？)
如何にも怪しげな瓶。普通なら開けない。普通なら。
けれどこれは、この世界を変えてしまうものかもしれない。ならば自分は知らなければならない。世界を正しいものにする為に。
「なんて、そんな細かいこと考える以前に自分が気になるんだよな。」
中途半端に知って中途半端に終わるのは心が落ち着かないものだろう。
きゅぽんっ
容赦無く蓋を取る。
すると、瓶の口から初めは金、そして赤い炎が燃え盛った。そして、ビュンッ！と勢い良く光り輝く何かが飛び出してくる。光に包まれたその何かは徐々に大きくなり、大体七十センチメートル程の大きさになった頃。
(これは、)
光は、人のシルエットを作っていった。シルエットはどんどんその姿を浮かび上がらせる。そして。
「〔…あ、れ？〕」
姿が完成したと同時に、その子は目を覚ました。
炎のような赤い髪、同じく燃え盛るような紅玉の瞳。そして、尖った耳と炎の羽。まだ未完成な少年の顔立ちをしているとはいえ、この姿は完全に。
「＿＿＿＿妖精？」
ポツリと呟くように目の前の少年へと問いかけた。ぽーっとしていた目をハッとさせ、少年は驚きの声を上げた。
「〔え、えええ！？で、出られた！？オレ出られた！？〕」
ワーワー騒ぎながら自分の周りをグルグルと羽を使って飛び回る。
(羽は本物なのか。)
ということは、本当に妖精なのか。此奴。
「〔おまえか！？お前がオレを出してくれたのか！？〕」
少年は顔をずいっと前に出して自分を見つめてくる。自分は少し戸惑いつつ、「ああ。」と肯定した。
「〔わああありがとう！オレ、ずっとその瓶の中に閉じ込められてて、自力じゃ出られないしもうどうしようかと…！〕」
「分かった、分かったから落ち着け。」
どうどう、と少年を宥め、咳払いをして問いかける。
「自分は虎門白桃だ、お前は？」
少年は、キョトンとした表情で見つめた後、すぐに太陽のような笑顔を見せた。
「オレはサラマンダー！【火の精霊 サラマンダー】だ！」
妖精だとは分かっていたが、まさかの四大精霊だった。
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雪音(プロフ) - 餓羅鑼さん» コメントありがとうございます。マイペースですが更新頑張っていきます。 (2021年6月14日 6時) (
レス) id: 8e077a453c (このIDを非表示/違反報告)
餓羅鑼 - 続編万歳ですっっ！！更新楽しみにしてます！ (2021年6月14日 0時) (レス) id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪音 | 作成日時：2021年6月13日 21時
