三十五之門 side Allen ページ4
『…え』
『自分を此処へ連れて行くことを提案してくれたのはお前なんだろう？あの時一緒にいたそっちの黒髪は自分の存在に不満気だったし。
話す機会がなかなか無かったし、自分は英語が下手くそだったから、伝えるのが遅くなってしまったけど……。』
どうして、感謝するのだろう。巻き込んでしまった筈なのに。僕は焦って白桃に詰め寄る。
『ど、どうしてっ？感謝なんて…本当なら、連れて来てはいけなかったのに…連れてくれば、この戦争に君を巻き込んでしまうのに』
それを僕らだけが承知の上で、君の意見も聞かずに連れて来てしまったというのに。
彼はポカーンとして、僕の言葉を時間をかけて処理していく。
『え…？………………そういうことになるのか？あんまり深く考えてなかったな。』
『『えっ』』
思わずその場に居た面子の声が揃う。なんだろう、言葉が上手く通じなかった時は分からなかったが、この子はそこまで大人しい子では無いのだろうか。芯が強いとは予想していたが、ここまで…その、大雑把というか、能天気だとは思っていなかった。
『………えっと、白桃』
『あ、名前知っているんだな、自己紹介の手間が省けてよかったよ。』
『うん、今そんな感じの話でしたか？』
『違うな。』
『ですよね？まって、白桃。キミちょっと黙ってて貰えません？』
『？いいぞ。』
あまりにも軽いOKだった。
落ち着け、落ち着け僕。そして他の四人も落ち着くんだ。
思いの外彼は我が道をゆくタイプらしい。態度は違えど、人の話を聞かないところはうちの師匠そっくりだ。
能天気、話を聞かない、どんどん僕の中での彼のイメージが変化していく。というか崩れていく。
自然と、この子は守らなければいけない存在だと思っていた。僕らのように強くない彼を守らなければ、と。心が強いとはいえ、それはいつ壊れてしまうか分からないものだ。だから、守ろうと。
なのに、想像以上だ。この子の芯は、僕が想像した遥か上を行く強さだった。
『………君は、本当にそれでいいんですか？』
恐る恐る、問いかける。それをいとも簡単に、彼はあっさりと答える。
『ああ、そうだな。自分は見届けると決めたから。』
(嗚呼、本当に。)
どうしてこんなに強いんだ。普通なのに、僕らよりも力も何も無いはずなのに。
言葉が通じて、より彼の姿を色濃く感じた。そして気付いてしまったのだ。
僕に無くて、彼にあるものを。
そうとも知らず、彼は朗らかな空気を纏い表情を柔らかくさせた。
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雪音(プロフ) - 餓羅鑼さん» コメントありがとうございます。マイペースですが更新頑張っていきます。 (2021年6月14日 6時) (
レス) id: 8e077a453c (このIDを非表示/違反報告)
餓羅鑼 - 続編万歳ですっっ！！更新楽しみにしてます！ (2021年6月14日 0時) (レス) id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪音 | 作成日時：2021年6月13日 21時
