五十七之門 ページ30
「オイモヤシ、何気絶してんだ。」
神田はコムリンによじ登り、アレンの長くなった髪を引っ張って起こそうとする。
「よせ神田、アレンは体調が良くないんだ。」
「……チッ」
自分がそう言うと、神田は舌打ちをしつつも大人しく引き下がった。
「とりあえず、今のうちに身を隠せる場所を探そう。」
感染源である人物が分からない今、身を潜めて安全を確保することが重要である。だからこそこの意見、そして原作通りの道を辿る為だ。
自分は原作を知っているので、本当は感染源が誰であるかも知っている。しかし、こんな事態で自分が「感染源はこの人だ。」と言ってしまうと、ただでさえ薄い自分への信頼はさらに薄れ、「この内乱を引き起こしたのはお前ではないのか。」等と疑いの目をかけられるかもしれない。そもそも、感染源である人物を自分がどうにかすることすらも出来ないのだから、無駄な行動はしたくない。さらに、分岐点ともなる先の展開を話してしまうことはもっと先の未来を大きく変えかねない。それでは大変だ。
というわけで、自分はなるべく神田達を原作通りの行動へ導くことに徹することにする。まず自分の介入していることによってどれだけ話に変化が現れるか分からないのだし。ある程度頑張らねば。面倒だが。
自分の指示に従ってくれるか少々不安があったが、全員緊急時であることは理解出来ている。まぁ当たり前か。
神田は少し不満げに溜息をつきつつも歩き始め、隠れる場所を探してくれるようだった。ラビもそれについて行く。
ジョニーもアレンを介抱しつつ、コムリンと共に歩き出した。
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暫く辺りを散策して、敵のいない物置を見つけてそこに留まることになった。
「アレン、何だか魘されてるね。」
ジョニーが未だに眠るアレンを心配した様子で見つめている。自分は、その理由を知っている。それでも、
「…ああ、心配だな。」
知らないフリをする。心が痛まない訳では無い。だからと言って運命は変えるべきではない。
(彼等の為、彼等の為……。)
頑張れ自分。そう言い聞かせるしかない。
「だ、れ…」
ポツリと零れたアレンの寝言に、落ち込んでいるコムリンを除く全員の視線が集中した。
表情はより険しくなり、若干の汗をかいている。次々と零れ落ちる苦しい声にもならない声をあげている。
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雪音(プロフ) - 餓羅鑼さん» コメントありがとうございます。マイペースですが更新頑張っていきます。 (2021年6月14日 6時) (レス) id: 8e077a453c (このIDを非表示/違反報告)
餓羅鑼 - 続編万歳ですっっ!!更新楽しみにしてます! (2021年6月14日 0時) (レス) id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪音 | 作成日時:2021年6月13日 21時