三十三之門 side Allen ページ2
『ぶっちゃけ、みんなアイツのことどう思うさ？』
昼食時、ラビが僕らに言った。その問いに、リナリーは少し困った様子で、神田とリンクは知らんぷり。僕はというと、フォークを進めるのをやめ、少し考え始めた。
"アイツ"というのは紛れもない、あの少年。白桃のことだろう。
確かに、彼は何を考えているか分からないし、何処から来たのか、敵か味方かも分からない不思議な子だ。
しかし、ラビの質問の意図が読めない。何故、どうしてそれを僕達に聞くのか。僕はそれが異様に気になった。考えているうちに、リナリーが先に口を開いた。
『そうね…私はいい子だと思うけど、』
彼女は少し勇気を振り絞った様に言った。可憐な少女が意を決して話してくれたのだ。蔑ろには出来ないし、傷付けるわけにはいかない。だから僕はその意見に賛同した。勿論、僕自身もあの子のことは悪い子ではないと思っているし。
『僕もそう思います。……でもラビ、どうしてそんなことを？』
『いやさぁ、やぁーっぱアイツ、英語喋れないじゃん？だから、上手くコミュニケーション取れないっつーか、無表情の割に感情は豊かそうだから雰囲気で感情が読めなくはないけど、こっちの意思が向こうに伝えるのが難しくって…正直、関わり方に困るんさ。』
『……＿＿＿』
その言葉で、ラビの気持ちがよく分かった。
ラビと僕は、少し似ている。本当の気持ちを偽るところ、あまり自分を表に出さないところ。
そう言われると、僕も少し思うところがあった。
あの時、あの廊下であったこと。
あの子の思いは、無表情ながらによく分かった。でも、こっちの言葉や思いは彼にあまり伝わっていないように見えた。
だから、関わるのを少し躊躇ってしまう。
『そう、ですね…確かに、そうだ……。』
(巻き込んだのは、僕なのに。)
彼が何者であるかなんて、そんなことは本当にどうでもいいんだ。
でも、連れてきた僕がこんなに彼を放り出してしまっていいのだろうか。
その罪悪感が、未だに引っかかっている。
僕は思わず黙り込む。ラビやリナリーが心配そうにこちらを見ていることに気付かぬまま。
すると、隣から声が降ってきた。あの憎たらしい声が。
『連れてきたのはテメェでも、此処に居るって決めたのはアイツ自身だろ。』
『え、』
『そんなしみったれた顔する筋合いはねぇ。』
有り得ない、と言いたげな表情で神田の方を四人揃って見つめる。
(だって、本当に。あの神田が、)
そんな、僕を慰めるようなことを言うだなんて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 27人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪音(プロフ) - 餓羅鑼さん» コメントありがとうございます。マイペースですが更新頑張っていきます。 (2021年6月14日 6時) (
レス) id: 8e077a453c (このIDを非表示/違反報告)
餓羅鑼 - 続編万歳ですっっ！！更新楽しみにしてます！ (2021年6月14日 0時) (レス) id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪音 | 作成日時：2021年6月13日 21時
