heartbeat

缶コーヒー ページ17

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午前中に交通外傷でERに運び込まれた高山さんは、30代の男性で、結婚して間もないという。
信号無視をした自転車を避けた対向車が突っ込んできたらしく、車体が大きく横転したため全身を強く打った可能性もあり、まだ予断を許さなかった。

嫌な予感は的中する。
白衣のポケットでピッチが鳴った。

「はい天堂です。」
「天堂先生お忙しいところすみません。ICUで心タンポです。心嚢穿刺したいのでフォローお願いしたく。」
「承知しました。カテ室は僕がおさえます。」

救急医の同期からのコンサルだった。ピッチの終話ボタンを押しながら医局を出て、階段を駆け下りながらカテ室へ連絡を入れ準備を指示した。

心タンポナーデは交通外傷や大動脈解離、または心不全、腎不全、悪性腫瘍などのあらゆる病態から心囊液が増加して十分に心臓が拡張できないことで心臓のポンプ機能が能力を失った状態を示し、心停止に至る可能性がある。そのため心臓を圧迫する心囊液を排液する目的でカテーテルを挿入する。


処置の全てが終了して、高山さんがICUに戻ったのはもう夜が更けてからだった。
着替えを終えて、一服しようかといつものベンチで寒空を見上げた。



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