09.見ない顔 ページ10
白恋と雷門で練習試合を何回かして
すっかり夕方になった
士郎は雷門の人たちに捕まっていたから
私は先に帰って、休む事にした
今日だけで沢山の必殺技が見れて、なんだか楽しかった
私も昔は練習して、試合で覚醒とか考えたけど
上手くできなくて、士郎とアツヤの前でよく泣いていた
でも…本当は私もサッカーがしたい
試合を見ていると、胸の奥が熱くなって
あの場所へ私も…なんて思ってしまう
？「すみません」
「…はい」
？「白恋中学校は、こっちで合ってますか？」
「ここを真っ直ぐ行って、大きな看板を右に曲がれば
校舎が見えてきますよ」
？「ありがとうございます、ここは寒くて…迷子になってしまったかと、助かりました」
「…随分と薄着ですね。北海道の人じゃないです？」
？「旅行でこっちに、旅をするのが好きなんだ…ﾊｸｼｭｯ」
クシャミをして寒そうな男の子
なんだか見てられなくて、私は巻いていた青いマフラーを
その子の首に巻いた
「あげます。風邪引かないように」
？「っ…ありがとう、優しいね」
一瞬でも驚いたような顔をして、嬉しそうに笑った
？「名前…聞いても良いかな」
「…貴方も教えてくれるのなら」
？「もちろんさ」
「私は、冬樹A。」
？「俺は基山ヒロト、また会おうね。Aちゃん」
旅が好きなら会うことなんてないと思うのに
何故かその言葉が胸に響いてきた
かっこいい子だったな
「ん...？」
家に向かって少し歩いたら、雪の中に綺麗な石があった
それは紫色で、キラキラと輝いていた
上から雪が積もってない、基山くんが落としたのかな
後ろを振り返ると、もう姿はなかった
「...また、会えますように」
私は石をハンカチに包み、家に持って帰ることにした
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作者名：エト | 作成日時：2023年9月14日 2時
