05.会いたかった ページ6
ここもよく、3人で遊んだ場所
ここでやるサッカーが、とても楽しかった
3人で必殺技とか考えたっけ...
アツヤがいなくなって、ここにも来なくなった
「ごめん...勝手にあの場所に行って。
もう...ひとりじゃ行かないから」
吹「あぁ...全くだな」
「え...」
吹「お前はいっつもフラーっとどっか居なくなって
探しに行って見つけたと思ったら熊に襲われてるし」
話す口調が士郎にしては少し強めだった
吹「昔もそうだった。Aは大人しそうに見えて
結構やんちゃするんだよな」
「...ねぇ...あなた...士郎だよね...？」
士郎は私をベンチに下ろし
マフラーを少しずらして、ニコッと笑った
吹「さぁ...誰に見える？」
ふとこの光景が、昔のものと重なった
あの子も笑う時、マフラーに触る癖があった
少し赤い瞳
鋭い目付き
荒くても優しい口調
全てあの子と重なる
「.....っ...アツヤ...？」
確信が持てないまま、小さな声で私は言った
士郎...は目を見開いて、驚いている
そうだ...当たり前だ
亡くなったアツヤがここにいるわけが無い
ましてや双子の弟と自分を重ねられて
私.....最低だ
居なくなっても度々思い出しては、心の中で話しかけてしまう
何度も何度も、会いたいと願った
もう一度一緒に遊びたい
もう一度一緒にサッカーがしたい
3人で眺めた、雪景色に溶けていく夕日が見たい
どんな些細なことでもいい
もう一度、アツヤの笑った顔が見たい
アツヤに...会いたい
「.....アツヤ...会いたいよ...っ」
私の目から、涙が溢れた
思い出して、声に出す度
楽しかったあの日に戻りたいと強く願う
涙が止まらなかった
士郎...ごめんね
士郎の方が、もっと深く悲しいはずなのに
私が泣いてごめん
吹「.....あーあ、バレちまった」
「っ！.....しろ「アツヤ」...っ...うそ...」
ア「オレに会いたかったんだろ」
「...違う...やめて士郎」
ア「だーかーら、アニキじゃねぇって」
「...貴方は士郎、アツヤじゃない」
ア「んー...なんつーか、アニキの中にオレが居るみたいな
とにかく、意識は今オレ、アツヤなの」
嘘を言っているように見えなかった
今朝から今まで
昔からサッカーをしている時も薄々...存在を感じた
「っ...ﾂﾔ....アツヤっ...アツヤ...！！」
私はベンチから立ち上がり、思い切りアツヤを抱きしめた
アツヤもそれに答えるように、私の背中に手を回した
やっと......やっと会えた
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作者名：エト | 作成日時：2023年9月14日 2時
