04.山おやじ ページ5
「ﾌﾝﾌｰﾌﾌｰﾝ...ﾌｰﾌｰﾌﾌｰﾝ...」
私は真っ白な雪道をサクサクと進み
鼻歌を歌いながら、空を仰いでいた
私は久しぶりに、昔3人でよく遊んだ木の下へ行ってみた
「懐かし...」
アツヤと家族のお葬式を終えてからは
ここによく1人で、居ないアツヤに話しかけに来たっけ
年月が経つと、何だかアツヤそばに居てくれるように気がして
安心して行かなくなってた
それは士郎のおかげかもしれない
士郎がずっと、私のそばに居るから
寂しい気持ちが少しずつ薄れて行ったのかも
だからと言ってアツヤを忘れた訳じゃないからね
...いつか、またどこかで
「会えるかな...アツヤ」
ｻﾞｯ...ｻﾞｯ...
少し離れた場所から、足音が聞こえてきた
「もー...遅かったじゃん、しろ.....う...っ...」
足音の先を振り返ると、私のすぐ後ろには
体長およそ2m超えの、大きな熊が立っていた
熊「ｸﾞﾙﾙﾙﾙｯ...」
周辺の皆が、「山おやじ」と呼んでいる
とてつもなく大きな熊だった
「え...うそ...」
私は子供の頃、同じ熊に1度襲われかけた事がある
その時は、アツヤが一生懸命大きな声を上げて
強烈なシュートで追い払っていた
私はサッカーが出来ても、アツヤのような脚力も
圧倒できる必殺技も持っていない
だったら...
「お腹すいてるんでしょ...だったらこれ、取りに行け！！」
私は今日の給食で残したみかんを投げ
サッと熊をかわして、家の方へと走った
熊「ｳﾞｧｧｧｯ！！」
空腹で気がたっているのか、私をしつこく追いかけて来る
もう...ダメ...寒くて足が動かない
私、襲われて食べられるんだ
意識がもうろうとしてきた時、視線の先に
士郎が現れた
「士郎っ！！逃げて！！」
吹「っ！A！」
熊「ｸﾞﾙァァ！！」
ﾄﾞｶｯ
ﾄﾞｽﾝｯ
もうダメだと思って目を閉じ、覚悟を決めた
鈍い音が響き、うっすら目を開けると
目の前に先程の熊が倒れていた
吹「よっ...と」
「え？あ...」
士郎は私を何事も無かったかのように抱き上げ
その場を後にした
「ねぇ士郎、自分で歩けるよ」
吹「.....」
「...士郎、怪我してない？」
吹「.....」
私が真っ直ぐ家に帰らなかった事を怒っているのか
士郎は何も返事をしてくれなかった
前髪とマフラーで表情が見えない
士郎は家の前に着いたけど、一旦止まり
何故か別の場所へ足を運び出した
家の近くにある公園に着いた
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作者名：エト | 作成日時：2023年9月14日 2時
