22 . ページ24
.
…
始まりは沈黙。
私は椅子に座って母親の落ち着かない様子を演じる。
望君は机の上の手紙を手に取って真剣に読む兄。
他の2人も冷静を装う姉や、状況に震える妹を見事に演じる。
望「ああもうっ！分かんねえよ…」
望君の演じる兄のこの叫びから、物語が動き出す。
「ちょっとお兄ちゃ…」
望「父親が誘拐？そんな事あるかよ！」
A子「うるさい望、C子が怖がるでしょ。」
「そ、そうよお兄ちゃん、一旦冷静に…」
望「母さんに言われたくないね。」
夜遅く仕事から帰ってきた父が突然居なくなる。
"お前らの父親を誘拐した"とだけ書かれた手紙を見た4人は冷静になんてなれない。
こうした状況の中、4人がお互いを責め合う場面が5分ほど続く。
そしてここからが転機。
突然「自分で家を出た。」とだけ良い切れる父の電話。
この転機から主演である望君演じる兄が狂っていく。
望「父さんより自分達のこれからの方が大事なのかよ。
俺達には食料もある、テレビだってある、気持ちいいベッドだってある。父さんは全部ないんだよ？このままじゃ父さんが…」
A子「ちょっと、落ち着いて望。」
「私達みんな辛いのよ、お父さんがそういう状況なのも分かってる。」
望「ﾊｱ…ﾊｱ…」
…望君？
望君が大きく息切れをしている、ト書きにそんな事書いてない。
ここのト書きは"ばったり床に座り込んで悲しそうな表情を見せる"なはず…
…と、とりあえず物語を進めよう、
「そ、そんな顔しないでよ、こっちま…」
望「だって父さんがいないんだよ！俺どうすればいいんだよ！」
次のセリフまでなんとか繋げられた。
…望君の演技の様子がおかしい。
このセリフはこんな激しくする所じゃない。
力が抜け切って震えながらこぼれるようなセリフだ。
望「なあ母さんっ！」
突然、望君は私の両肩を掴んで強く揺さぶりながら嘆いだ。
こんなセリフない。ト書きもない。
望「なあ！Aっ！」
望君にそのまま後ろに押し倒され、激しく揺さぶられる。
抵抗も何も出来なかった。ただ望君の荒ぶりを受けるだけ。
淳太先生がすぐさま駆けつけて荒ぶる望君を押さえつける。
必死で足掻く望君のその姿は誰も見た事のない、
まるで凶暴な野犬だった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 172人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
孳埜(プロフ) - Nextさん» ありがとうございます！最近忙しくてお話かけてなくて...そんなこと言っていただけるなんて感謝感激です！！これからもご愛読よろしくお願いします(_ _*) (2019年3月2日 12時) (
レス) id: b5c8d0b27b (このIDを非表示/違反報告)
Next - 続きが楽しみです！更新、無理せずに頑張ってください！ (2019年3月1日 21時) (レス) id: cf1942b956 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：孳埜 | 作成日時：2019年1月30日 22時
