4.寒空の下 ページ5
脳のキャパオーバー。
そう表現するのが最も手っ取り早い。
目まぐるしく激しい感情の変化に、もはや正常運転をすることが出来ない。
私の感受性はこれ程までに繊細だったのだろうか。
不安、高揚、好奇心、愁傷、短時間でこれ程様々な感情に左右される事なんて未だかつてない。
呆然としたまま時間だけが過ぎる。
いつまでもこうしている訳にはいかない。
重い瞼をを手の甲で擦って席を立つ。
外の空気を吸って頭をすっきりさせよう。
入った時は黄昏時だった木戸の外は、真っ暗で赤提灯が灯っていた。
｢へい、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしておりやす。｣
人懐っこそうな青年がお見送りの言葉とともに頭を下げてくれた。
明るい青年の声に胸を鷲掴みされた。
私は腫れっぼったい瞼を隠すべく下を向いて返礼をするだけに留める。
1歩外に踏み出すととひんやりとした空気が肌を撫でた。スカートから覗く足がぶるりと震える。
こんな寒空の下、私はどうすればいいのだろう。
転々と灯る赤提灯も私を嘲笑っている。
一人ぼっちの私を。
友人もいない、家族もいない、居場所がない、誰も私を知らない……言葉通りの一人ぼっち。
乾いた笑みが口元に浮かぶ。
｢世界が違う｣
自分に向かって囁くと馬鹿馬鹿しすぎて笑ってしまう。
気持ち悪くなって座り込んで、立ち上がったら漫画の中の世界です。
しかも私が先日一気読みをした『昭和元禄落語心中』のキャラクターが手の届く距離にいます。
目を背けていた考察は馬鹿を通り越して大馬鹿者であろう。
いっその事、誰か私を｢阿呆｣だと罵って｢お前は精神が崩壊したんだ｣と言ってくれば気持ちが楽になるかもしれない。
ドッキリ、時代劇、そう思うことで違和感を納得させてきた分、虚しさが募る。
いやもしかしたら、そもそもの定義がおかしいのかもしれない。
私は既に死んでいてだからここは死後の世界なのかもしれない。
逃避に似た思考回路に虫唾が走る。
ぐるぐると回るネガティブは無限のループを繰り広げ、私を束縛する。
こういう時に思いっきり声を上げて泣きたいのに涙の箱は乾ききっていた。
なぜこんなにも不運は留まらずに運ばれて来るのだろう。
｢壁は乗り越えるためにある｣
もしもそんな事を言う輩がいたら全力でぶっ倒して二度と立ち上がれない精神状態にしてやりたい。
もう疲れた。寝てしまおう。
何も考えず、感情にも左右されず、永遠の眠りにつきたい。
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司(プロフ) - かさむらさん» ありがとうございます！ゆっくりな更新になるかとは思いますが、また覗きに来てください😊 (2022年3月10日 20時) (
レス) @page12 id: a9e06ac14f (このIDを非表示/違反報告)
かさむら(プロフ) - 好きです😭 (2022年2月21日 1時) (レス) id: 4aae2010b1 (このIDを非表示/違反報告)
司(プロフ) - 返信遅くなってしまい申し訳無いです。三年ぶりの更新ですのでこのページにいらっしゃる事はないかと思いますが、完結させるまで描きたいと思います。コメントありがとうござました！！ (2020年4月30日 20時) (レス) id: 619e207b44 (このIDを非表示/違反報告)
はな - 好きです (2018年10月4日 12時) (レス) id: 45985fda0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：司 | 作成日時：2017年6月12日 12時
