蜘蛛と蝶 ページ2
「姉さん、おはよう」
外も暗くなりだした頃、弟が目を覚ました。
「おはよう。今日はたくさんの鬼狩りが来ているらしいから気を付けて。」
「分かった。本当に姉さんの血鬼術は便利だね。」
「わたしも重宝しているわ」
わたしたちは人に近い姿をしてはいるけれど、本質は対にあるとも言われるほどに遠い"鬼"という生き物だ。
いや、そもそも生きているのかも分からない。
そんな鬼の中でも強い種のみ、血鬼術という特定の術が使える。
弟の累は蜘蛛の鬼だから糸を使った術を使う。
対して姉のわたしは蝶の鬼。
空を舞い、相手の生気を吸い、力とする。
幻を見せたり、敵の動きを鈍くすることができる。
また、偵察用の小さな蝶を使い、情報収集もする。
わたしの生み出した蝶は、日光にも耐性があり、あの方からも高く評価されている。
「帰ってきたらまた一緒にあやとりをしない?」
「いいわね。そうしましょう。それじゃあ、わたしは行くけれど累はどうする?」
「僕ももう行くよ」
「分かったわ」
二人で住みかにしている小屋を出て一度互いに顔を合わせて反対方向に駆け出す。
すると、わたしの後ろに二人の鬼がついてくる。
「いつも通りすずは右、りんは左について頂戴。」
「「御意」」
すずとりんは累の血の力で少し累に似た姿をした女の子の鬼。
二人とも人間に殺されそうになっていたところをわたしと累に忠誠を誓うことを代償に助けて貰った弱い鬼だった。
今はわたしと累の力である程度の強さを持つ。
そしてわたしたちの前に黒い隊服を着た青年たちが現れる。
「鬼かッ!!死ねッ!!」
わたしの前の一人がわたしの首に向けて刃を振る。
「遅いわね。階級は辛ってところかしら?」
そんな新人に殺せる程弱くはないのだけれどね。
そう思いながら、目の前の青年の振った刀を手で砕き、そっと息を吸う。
「…血鬼術 人喰いの夜桜」
「ッ!!」
わたしの指先から濃紺の闇と薄桃の花弁が舞う。
そして、青年はそのまま術に首を捻られ、骨を折られ、死んでしまう。
「辛の程度でこんなところに来るからよ。」
まあ、そんな任務に当たった不幸も考えて一息に殺してあげたのだけれど。
「A様、ここは我々にお任せ下さい」
「必ずや、皆殺しにして差し上げましょう」
りんとすずがわたしの前に立ち、それぞれ蜘蛛と蝶を出して準備をする。
「分かった、ここは任せる。」
「「はい」」
二人を背に、強い剣士の気配の方へ、わたしは走り出した。
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わらび@修行中(プロフ) - AYAさん» コメントありがとうございます!遊郭編ですか…前向きに考えてみます~! (2021年10月7日 17時) (レス) @page7 id: 282917b86f (このIDを非表示/違反報告)
AYA - 凄く面白かったです! 遊郭編も描いて欲しいです! (2021年10月6日 18時) (レス) @page9 id: 23da1d9ffa (このIDを非表示/違反報告)
わらび@修行中(プロフ) - 莉亜さん» わぁ~!ありがとうございます!!書きます!!全力で書かせていただきます!! (2020年11月15日 21時) (レス) id: 282917b86f (このIDを非表示/違反報告)
莉亜(プロフ) - 完結おめでとうございます!この後の後日編?みたいな感じ見てみたいです!もしよろしければお願いします (2020年11月15日 19時) (レス) id: f021d660fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらび | 作成日時:2020年10月29日 19時