砂糖水【花巻貴大】

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「国見とAちゃん、集合」



教室のドアから、そんな声がして私も国見もそちらを見る。



『あ、花巻先輩』


「ほんとだ」



ちょいちょい、と私達を手招きする花巻先輩。

どうしたんだろう。
バレー部の国見なら分かるけど、国見と一緒に私も呼ぶなんて。


そういえば、あれから花巻先輩は何だかんだでほぼ毎日図書準備室へ来てくれて。色んなお話をしてくれる。

練習試合での事、部活での事、どこが強いとか。

花巻先輩は話すのが上手で、いつでも聞き入ってしまって。時間はあっという間。


私が惜しそうな顔をすれば、花巻先輩が「また明日も来ていい？」と聞いてきてくれる。

花巻先輩が少し寂しそうな顔をすれば、私が「また明日も話、聞かせてください」って言う。


その昼休みが最近、唯一の楽しみだったりする。正直すごく楽しい。



「何ですか？」


「そんなめんどくさそうな顔するなって」


『私もですか？』


「そーそー」



花巻先輩の元へ行けば、私と国見を交互に見る花巻先輩。



「Aちゃんは、甘いの好き？」


『はい』



甘い物は大好きだ。いつもカバンの中にお菓子が常備されているほど。

だけど急にどうして？と花巻先輩に首を傾げると、ジャーンとスマホの画面を私達に向けてドヤ顔する花巻先輩はとても可愛らしい。



「塩キャラメル味のシュークリーム売ってる店があんの、放課後行かない？国見も、Aちゃんも」


「行きます。花巻さん最高ですか」


『え、早い国見。心なしかいつも死んでる目が輝いてる』



国見にしては分かりやすくテンションを上げた顔をするとまるで「お前も行くんだろ」とでも言いたげな顔で私を横目で見る。



「Aちゃんは？」


『私もぜひ』



まあ行くけども。



「よっしゃ、じゃあ今日練習ないし行けそう？」



嬉しそうにする花巻先輩に私も国見も黙って頷く。



「じゃまた放課後な！」


「はい」


『また』



小さく手を振ってくる花巻先輩に私も返せばニカッと笑顔を向けて去っていく。

花巻先輩って、年上だけどたまに幼く見える時あるんだよね……それに比べて国見は。



「何」


『花巻先輩に少しは感情表現教えてもらえば？』


「は？」


『そんな怒らないでよ』


「今のままでも十分伝わってるじゃん」


『表情筋を使えって言ってるの。圧じゃなくて』



まあ、でもそれが国見だからいいんだけどさ。

それにしても、放課後かあ。

……楽しみ。









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