砂糖水【花巻貴大】

番外編5 ページ43

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桜が舞う季節。

窓を開けていれば外からは色んな声が聞こえる。

ふわりと入ってくる心地の良い風に、髪の毛を揺らして。


二人で並んで床に座って。

ぼーっとする。



『……花巻先輩、』


「んー？」


『卒業、おめでとうございます』


「おう、さんきゅ」


『……あ、何か外から花巻先輩を探す声が聞こえてますけど』


「あー及川だろ。いいよ、どうせまた後で会うだろうし」


『…そうですか』


「ん」


『…………先輩のいない学校であとニ年も過ごすとか、すごく嫌です』


「なに可愛い事言ってくれちゃってんの。最初デコ巻先輩とか言ってたくせに」


『それは…まあ、事実ですし、今も言いますし』


「いや、やめて？」


『…知ってます？高校でしかできない事、たくさんあるんですよ』


「…ん」


『もっと早く出会いたかったです。せめてもう一年、早く生まれたかった』



明日からもう学校で花巻先輩と会わなくなるのかと思うとすごく寂しい。


確かに学校以外では会えるけど、制服で、学校で、図書準備室で、購買で、廊下で、体育館で、会えなくなると思うと寂しくて堪らない。


私はすぐ隣に座る花巻先輩の制服の裾をぎゅっと握る。



『出来る事なら私も今卒業したいです』


「どんだけ俺の事好きなんだよ」


『好きですよ、すごく』


「え」


『好きなんです。どうしようもないくらい。正直こんなに好きになるなんて思ってなかった……くらい、です…、』



だんだんと視界が歪んでいき、声は震える。

言葉は不自然に途切れ、花巻先輩に顔を見られないように下を向く。



「Aちゃん、」


『…は、い』


「俺も、めちゃくちゃ好き。Aちゃんに出会えて良かった。本当に」


『……っ、』


「ありがとな」


『せ、んぱい、』


「おう」







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