砂糖水【花巻貴大】

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「お、Aちゃん」


『花巻先輩、昨日は塩キャラメルありがとうございました』


「どういたしまして」



移動教室の為、廊下を歩いていればピンク色の髪が見え視線をやれば案の定花巻先輩で。

昨日言えなかった、お礼を言えばまた笑ってくれる。

そんな花巻先輩をぼーっと見ていると、「危ないよ」と腕を引かれて壁側へ。どうやら廊下のど真ん中で止まっていたらしい。


……もしや花巻先輩、出来る男なのか。

ナチュラルすぎたし、先輩本人も特に表情に変化はない。花巻先輩にとって、これは普通らしい。



「あ、そうだ。お詫び、考えた？」



思い出したように口を開くと、そう聞いてくる花巻先輩を見上げる。

相変わらず、背高いなぁ。

迷子にならなそう。



「ん？」


『あー…一応、』



前に花巻先輩が言っていた、私に水をかけた事へのお詫び。

別に私は怒ってもいないし、お詫びなんていいんだけど。

そう思いながらもゆっくりと口を開こうとした時。



「あ！マッキーだ！」


「うるせぇ及川！叫ぶんじゃねぇ！」



急に聞こえたそんな声にビクリと体を揺らして、そちらを見る。


あ…確か及川先輩と、岩泉先輩だっけ。

及川先輩は知ってる。モテモテな人でしょ。

で、それを殴る岩泉先輩。

興味なくても、この学校にいたら嫌でも名前くらいは聞く。

ちなみに私は及川先輩はあんまり好きではない。顔はまあ整っているとは思うが。女子にわーきゃー言われてそれにニコニコしてる所が好きじゃない。


今こうして花巻先輩と話していた所を見られるのですらも嫌だ。


だって、この人絶対……


さすが及川先輩。

今私が考えていた通り。


私とは話した事もないはずなのに、花巻先輩の後ろから覗くようにこちらを見ると、



「あ、この子ギャラリーで見た事ある！たまに来てるよねー？」



なんて話しかけてくる。


何その甘ったるい声。

他の子に向けてあげてください。






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