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何で追いかけてくるの。本当に。私が変な事言ったのが悪かったけどここまで追いかけてくる理由なんてある?
「自分だけ言い逃げするなんてズルいよ」
コツコツ、とローファーがぶつかる音がしていたと思ったら少し先で足音は止まって花巻先輩の声だけがこの空間に響く。
「俺だって言いたいし聞いて欲しい」
なに。その言い方。
「顔見てちゃんと言いたい」
見つかるとかじゃない。それとはまた別の、心臓の鳴り方に膝を抱えて顔を埋める。
多分、花巻先輩には私がここにいる事はバレてる。バレてて、花巻先輩は決して無理矢理連れ出そうとするわけでもなくて。
私を待つように、そこにいる。
「…だめ?」
何がズルいだ。いつだってズルいのは、花巻先輩だ。
『……、』
「…Aちゃん」
私はゆっくりゆっくりと教壇の下から出て立ち上がるとそのまま足を進めて、私の名前を呼んで眉を下げて困ったように笑う花巻先輩の前で足を止める。
『…何でしょうか、』
さっき自分で言った言葉がまだ恥ずかしくて、一瞬だけ合った視線を速攻で逸らして俯けば「こっち見て」と柔らかく優しい声で言われる。
『無理です』
「何で?」
『無理だから、です、』
「…じゃあ俺そっち行っちゃうよ?」
意地悪なのか、本気なのか、分からないけれど。何となくそっちのが恥ずかしくなるような気がして床を見つめていた視線を上げて、花巻先輩を見た。
するとふわっと目を細めて笑った花巻先輩は、真っ直ぐに私を見つめる。
「今度は逃げないでちゃんと聞いて?」
『……』
「返事は?」
『…はい』
「ん」
何かもう、どうにでもなれ。自分が口走ったのがいけない。言うつもりがなくっても言ってしまったものはもう仕方がない。
腹を括り、ぎゅっと自分の手を握り締めて花巻先輩の言葉を待つ。
ここはやはりあまり使われていない場所なのか、人の声なんてせず。
怖いくらいに静かなこの空間。
苦しい程の沈黙を、花巻先輩が破る。
「まずはさっきの。嬉しかった、ありがとう」
『…はい』
「そんで、俺長々と話すのとか苦手だから、とりあえず今すぐに、俺の気持ちを伝えたい」
花巻先輩の表情はなんか少し柔らかくて。
私を映すその瞳は、優しい。
不思議と怖く、なくなって。
「俺、Aちゃんが好き」
その言葉を聞く頃にはついさっきまでキツく握り締めていたはずの手からは力が抜けていた。
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まあり(プロフ) - 黒瀬将哲さん» ちゃん付け!確かにそんなイメージあります!気にいっていただけたみたいで良かったです…!こちらこそ見つけてくださりありがとうございました( ; ; )! (2022年4月4日 21時) (レス) @page50 id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬将哲(プロフ) - マジでヤバかったです!もち、良い意味で!貴大くんがもうかっこよすぎて、所々深呼吸してました笑あと、めっちゃ共感したところなんですけど、貴大くんは「○○ちゃん」って呼んでますよね、絶対!本当に本当に尊くて最高なお話でした!!ありがとうございました!! (2022年4月4日 17時) (レス) @page50 id: 255371873d (このIDを非表示/違反報告)
まあり(プロフ) - 冬桜さん» わーっ!!!解釈違いが起こらなくて良かったです…!こちらこそ読んでくださり、嬉しいコメントまでありがとうございます( ; ; )! (2022年2月24日 21時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
冬桜(プロフ) - 女主が攻めたりって今まであんまりなかったので嬉しいです!!可愛いマッキーが解釈一致すぎて…!!!!ありがとうございますありがとうございますありがとうございます (2022年2月24日 16時) (レス) @page50 id: e2ae2aafdb (このIDを非表示/違反報告)
まあり(プロフ) - しおきゃらめるぱふぇさん» ううう、嬉しいです…( ; ; )ありがとうございます! (2021年8月3日 16時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあり | 作成日時:2021年5月31日 18時