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そんな風に落ち込まれたら
そんな顔されたら
『……及川先輩じゃないですよ、好きな人』
「本当?」
『本当です。花巻先輩も知ってるでしょ?私が及川先輩を苦手な事、』
「……ん、知ってる、」
そんな風に明らかにホッとしたような顔されたら、
嫌でも期待、しちゃうじゃないですか。
「あ、ごめんな」と私の手をパッと離した花巻先輩は元いた場所へ腰を下ろそうとする。
だめ、まだ、
私も、知りたい、
そう思うと私の体は勝手に動く。
今度は私が立ち上がり、離れて行く花巻先輩の指先をそっと掴んだ。
「…えっと、」
もちろん花巻先輩は驚いていて、「Aちゃん?」と俯く私の顔を覗き込んでくる。
私も知りたい、花巻先輩の事。
何でそんな事聞くのか
どうして優しくしてくれるのか
何で今そんな余裕のない顔を見せてくれたのか
花巻先輩に、好きな人はいるのか、
『あ、の、』
花巻先輩の少し体温の高い指先が、温度の低い私の手を温めてくれる。
緊張して、息が出来なくなりそう。
心臓が、痛い。
『っ、』
意を決して、私はゆっくりと顔を上げて困惑している花巻先輩を見上げる。
すると自然に絡み合う視線にまた心臓が大きく音を立てる。それだけで気持ちがふわふわする。嬉しくて、だけどそれが擽ったくて。ドキドキする。
……あぁ、
やっぱり私、花巻先輩の事、
『好きです』
「……」
『……ぁ、』
気付いた時にはもう遅い。
花巻先輩の手を離して、口を覆っても。
言ってしまった事実は変えられなくて。
嫌な汗が、額に浮かんだ気がする。
どう、しよう。
これを言うつもりじゃなかったのに。
想いを伝える心の準備なんてしてなかったのに。
花巻先輩は、目を見開いてただ私を見つめる。
そりゃあ驚くだろう。
私だって驚いてる。
『ご、ごめんなさっ……こんな事言うつもりじゃなくて……とにかく私、もう、行きますね、』
私はすぐ隣にあった鞄を手に取ると部屋のドアを勢いよく開けて駆け出した。
花巻先輩の声が聞こえたけれど知らないふり。
自分側にドアがあって良かったと心の底から思った。
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まあり(プロフ) - 黒瀬将哲さん» ちゃん付け!確かにそんなイメージあります!気にいっていただけたみたいで良かったです…!こちらこそ見つけてくださりありがとうございました( ; ; )! (2022年4月4日 21時) (レス) @page50 id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬将哲(プロフ) - マジでヤバかったです!もち、良い意味で!貴大くんがもうかっこよすぎて、所々深呼吸してました笑あと、めっちゃ共感したところなんですけど、貴大くんは「○○ちゃん」って呼んでますよね、絶対!本当に本当に尊くて最高なお話でした!!ありがとうございました!! (2022年4月4日 17時) (レス) @page50 id: 255371873d (このIDを非表示/違反報告)
まあり(プロフ) - 冬桜さん» わーっ!!!解釈違いが起こらなくて良かったです…!こちらこそ読んでくださり、嬉しいコメントまでありがとうございます( ; ; )! (2022年2月24日 21時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
冬桜(プロフ) - 女主が攻めたりって今まであんまりなかったので嬉しいです!!可愛いマッキーが解釈一致すぎて…!!!!ありがとうございますありがとうございますありがとうございます (2022年2月24日 16時) (レス) @page50 id: e2ae2aafdb (このIDを非表示/違反報告)
まあり(プロフ) - しおきゃらめるぱふぇさん» ううう、嬉しいです…( ; ; )ありがとうございます! (2021年8月3日 16時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあり | 作成日時:2021年5月31日 18時