クロくんと臆病猫【黒尾鉄朗】

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さっさとどっか行って。

性格悪いとか、怖いとか、そんなの知らない。

クロくんだけは、あげない。



「っ……」



森田さんはこんなにハッキリ言われたのが気に食わなかったのか、少しだけ悔しそうな顔をすると。この場から逃げ出すように、校舎に向かって走って行った。



「……」


『………はぁ、』


「……Aチャン、男前すぎて惚れ直す」


『……だって、』



耳を赤くさせて、両手で顔を覆うクロくんに私は腕を回したまま。ぎゅうっと力を込める。



『……クロくん絶対言わないし、あのままだったら森田さんの好き放題させてたでしょ』



伝わってるかな、私の気持ち。

好きなんだよ、これくらい。

伝われーって、思いながら。クロくんの首元に擦り寄る。



「なあー」


『ん？』



クロくんの呼び声に顔を上げ、腕を解いてクロくんの前にひょこっと顔を出した。



『あ、ちょ、』


「捕まえた」



瞬間、腕を引かれて。いつの間にか正座を解いてあぐらをかいていたクロくんの足の間に引きずり込まれた。クロくんの匂いだ。



「A、」


『ん？』


「すっげー好き」


『へ？うん』


「何だその返事は」


『クロくんが私の事好きすぎてしょうがないのは前から知ってる事』



私がそう言えば、一瞬だけ目を見開くが。すぐにフッと表情が和らいだかと思えば。


「そっか」と、私の額にキスを落とした。



「すっげー嬉しそうな顔してる」


『嬉しいもん』


「何か、デレデレじゃん。めちゃくちゃ可愛いんですけど」



んーっと私を抱きしめる腕に力を込めるクロくん。それに応えるように、私はクロくんに擦り寄った。









だけどその後すぐ。

落ち着く暇もなくそれはやってきた。

そんなに丸く収まるはずもなかったんだ。

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