クロくんと臆病猫【黒尾鉄朗】

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『クロくん、』


「お、A、」


「黒尾先輩！」


「悪いA、また後でな」


『……分かった』



ー



『クロく』


「黒尾先輩、ちょっと聞きたい事があって！」


『……』



ー



『ク』


「あ！いた！黒尾先輩！」


『……』



何なんですか。

何なんですかね、最近。

ほんっっとに。


クロくん以外にはあまり怒らない私。

クロくんに怒ると言っても拗ねる程度だけれど。

そんな私が最近ずっと、一ヶ月近く。ムカムカしている。


理由は明白。



「この事なんですけどねっ、」


「おー、悪いA、ちょっと待ってて」



クロくんに会いに、クラスに来ているのに。それはもう毎回のように。

私の目の前でニコニコと笑みを浮かべるこの子に。ここ数日はクロくんの名前すらも呼ばせてもらえない。
ポニーテールが特徴。私より小さくて、笑顔が似合う可愛らしい女の子。


クロくんと委員会が一緒の一年生らしい。



『………いい。自分とこ戻る』


「え」



私にしては分かりやすい態度だったと思う。

きっと表情にも出ていたし、声もいつもより低かった。クロくんの驚く顔も無視。目も合わせず、そのまま教室を出た。


クロくんは別に悪くない。

クロくんは面倒見いいし。たまに性格悪くなるけど、大体の人には優しい。

それに、ただ委員会の事で話しているだけ。


私の心が狭い……………のか？


でも、なんかあの子すっごいガツガツきてる気がするんだけど。

何なら意図的に言葉遮られてるのかなって思うくらいに気持ち良く遮られてるし。



『………あーやめよ、考えるのやめよ』



ぼそっとそう呟いて、私は黒いモヤモヤを放置してクラスへ戻った。



『……っていうか、追いかけて来てよクロくんのアホ』








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