クロくんと臆病猫【黒尾鉄朗】

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「……」


『……』


「…なーんてな」


『へ、』



目を瞑って待っていると、そんな声が聞こえて思わずポカーンと口を開けて目を開ける。



『…え、も、もしかして、やっぱり、さっきのはじょ、冗談…』


「は？違うっての。言った事はホント。だけど、キスは、」



…思えば、いつもそうだった。


今までイチャイチャした事はあると言っても好きと言われたりぎゅーされたりほっぺにキスされたり。そんな感じだった。


まだ、口に、キスされた事ないんだった。


その雰囲気にはなるが、いつもクロくんが寸前で止めるのだ。



『…やだ？』



キスは違うの？

キス以上は？

したくない？


そんな意味を込めて、そう聞くと。

クロくんは珍しく目を逸らす。



『……』


「…嫌なわけはない、寧ろしたい…けど」



歯切れ悪くそう言う。



『じゃあ、』


「"健全で安心なお付き合いを提供"するって言ったろ」



……いやいやいや、どの口が言うの？


キスはしなくても首や肩を噛んだりしてきたくせに。

そっちこそ健全じゃなくない？


少し気まずそうに私と目を合わせようとしないクロくんに、思わず吹き出す。



「笑ったな？」


『いや、だって、』



これは仕方ない。



「……」


『…ほんっとクロくんは、』


「……」


『馬鹿だよね』


「ほう、ここでディスりますか」



やっとこっち見てくれたクロくん。さっきと逆だ。


今まできっと我慢してくれたんだよね。

待っててくれたんだよね。

私が自分から言葉にするのも。

私の気持ちも。



『ね、クロくん』


「ん？」


『好き』



2人だけの空間に私の言葉が響いて、

さっきは俯いてたから分からなかったけど。


今はクロくんがどんな顔してるのか、分かる。








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