クロくんと臆病猫【黒尾鉄朗】

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席外してもらって悪いんだけど、今すぐに戻ってきて欲しいよツッキーくん。



この前まで、2人きりの時の空気が好きだとか思っていたのに。



今の空気は好きじゃない。


気まずくて、重い。




だけど、ここで口を開くのはクロくん。



「…悪いな、部活ばっかで構ってやれなくて……」


『何、急に。私が構ってちゃん彼女に見えるの？』


「イエ、」


『1人の時間大事だし、クロくんもバレー大事でしょ？』


「ふぐっ…さすが俺の彼女…でもそこは甘えようぜ？」


『私にそんなものを求めないでくれない？』


「ウィッス」



…って何だこの会話。

今話すべき内容じゃなくない？


それに今まで1度も構って欲しいなんて言った事なんてないし、クロくんがバレーを好きなのも一生懸命やってる事も知ってて応援してるのに…









「……なあ、」



その声は、今日聞いた声で1番、低くて、真剣なそんな声だった。



「…Aは、俺の彼女だ」


『……な、に言って、』


「俺はAが好きだし、Aじゃないと無理」


『……』



いつもの、真っ直ぐな言葉。


嘘偽りなく、私の心にストンと落ちる、クロくんの言葉。



ずるい。何なの、この人は。


私、避けてたんだよ？


何も言わないで、逃げてたんだよ？


怒ってないの？



だんだんと歪む視界に、ソレが溢れないようにキツく下唇を噛む。



「あー…悪い。泣かせるつもりはなかった。…ちょっと出よーぜ」



クロくんはそう言うとスマホを片手に「ツッキーに連絡しとくわ」と言って数秒後。



どうにか涙を堪える私の手を優しく握って、歩き出した。








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