まるで何かが始まりそうな短編集【ハイキュー】

体温と西谷夕 ページ19

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『重いって西谷』


「耐えろ！」


『何で』


「俺がラクだからだ！」


『今すぐに離れろ』


「ふはっ」



席に座っている私の背にだらーんと体重をかけ、どいてと言う私の言葉に笑いながらやっと引いてくれる。

私を何だと思ってるんだこの人は。

他の女子にこんな事する勇気なんてないくせに。

スッと軽くなった体に、私はゆらりと立ち上がる。西谷はもう既に田中と何か違う事を話していて。


…仕返しだこのやろう。


そして私は西谷の背後から近寄ると両腕を西谷の肩へ回して、さっきの西谷と同じように体重をかける。

意外にもビクともしないな。さすが運動部。



『へへ、どうだ！』



そう言って、なぜか動かなくなった西谷の顔を伺おうと彼の顔を覗き込めば。



『…どうしたの』


「……」



1番に見えた耳、そして次に見えた頬は赤く染まっていて。

だけどその理由はすぐに分かった。



「おまっ……」


『……？』


「な、何か当たって…！！」


『……』



何か当たっ……、


西谷は今は体操着。

私も、体操着。


制服より断然薄い体操着。


きっと西谷が言っていたのは……、



『っ……西谷のアホ！！！！！！バカ！！！！変態！！！！！！』



む、胸か…！！！

そして私は、カァッと熱を帯びた顔を一瞬だけ上げると西谷の前に回り込んで。



「ぶべっっっっっ」


「ノヤっさん！？！？」



ピシャリ、と。


フルスイングで西谷の頬にビンタして、逃走した。









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