ー ページ18
ー
『……っ、』
そこでふと、煉獄さんといつか話した会話を思い出す。
もしお互いがいなくなってしまったらっていう話をした時の事。
“もし俺がいなくなっても君は自分を大切にしろ。あまり無茶はするな。胡蝶も心配する。そして必ず……強く生きろ”
強く、生きろだなんて…
考えただけでもこんなにも怖くて苦しくて、辛いのに…
そんなの、
「ほら、そんな顔しないでください」
泣くのを堪えるように唇を噛めばしのぶさんの柔らかいそんな声が聞こえて私の頬に小さな手が添えられる。
顔を上げればしのぶさんの綺麗な紫色の瞳。
「Aちゃんは怖がっているんでしょう？煉獄さんがもしも消えてしまったらと」
『…っ、』
しのぶさんの真っ直ぐな瞳に嘘なんかつけるはずもなく素直に頷く。
『だ、って……れんごくさんが、いなくなってしまったら、わたしっ…』
今にでも溢れそうな涙をどうにか留めて、口を開く。
だけどそれもすぐに閉じる。
『……っ私は、』
言葉なんて出てこなくて。
代わりにしのぶさんの形の良い唇が言葉を紡いでいく。
「Aちゃんの言っている事は分からなくはないです。だけど、起こるかどうかも分からない事で不安がって煉獄さんから離れている時間があるのならちゃんと向き合って解決した方がいいと思いますよ」
『…でも、』
「でもじゃありません。きっとまだAちゃん自身の気持ちをちゃんと伝えてもいないのでしょう？何でも良いんです。少しで良いんです」
『…っ、』
「きっと、煉獄さんは待っていますよ」
何でだろうか。
しのぶさんの言葉を聞いたら今までぐるぐると頭の中を回っていた考えが少しだけなくなった気がした。
「ですから、ほら」
しのぶさんはそう言って私の肩をぽんぽんと叩く。
うじうじとしている時間があるなら、煉獄さんに…
『……しのぶさん、』
「はい」
『…っありがとう、ございます』
私は目に溜まっていた涙を両手で拭って、微笑むしのぶさんに頭を下げると背中を向けて足を踏み出す。
私の思いは、考えは、もしかしたら迷惑かもしれない。
呆れさせてしまうかもしれない。
だけどきっと、このまま言わない方が後悔してしまう。
……何より、ずっとこうしていたら煉獄さんに会えないような気がして。
私は覚悟を決め、煉獄さんがいる病室へ足を進めた。
ー
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 316人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まあり(プロフ) - まゆさん» まゆさん、最後まで読んでくださりありがとうございます！キュンキュンしていただけて嬉しいです！こちらこそ感謝です！！！ (2021年4月23日 19時) (
レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます！１から拝見しててとても感動とキュンキュンと楽しさもあって....感動作をありがとうございます！ (2021年4月17日 1時) (レス) id: f2813c0044 (このIDを非表示/違反報告)
まあり(プロフ) - 明日香さん» また、すみません、ありがとうございます！ (2021年3月12日 21時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
明日香(プロフ) - 43話の次が12話ですか？ (2021年3月12日 21時) (レス) id: 239fe8d3ac (このIDを非表示/違反報告)
まあり(プロフ) - まゆさん» さて、何が起きるんでしょう…？お楽しみに…！ (2021年3月10日 20時) (レス) id: ff29d485fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まあり
| 作成日時：2021年3月7日 13時
