21 ページ21
.
「良かった、ココア買ってて」キッチンから声がした。
手も洗わず上着も脱がず、とりあえず座りなとソファーに誘導されたまま。
界人「寒いな〜まってね暖房つけるから。ストーブもつける?……あ、そういえばタオルケットあるから使いなよ。ちょっと待ってね。上着預かっちゃうよ」
「ありがとう」
鼻声の「ありがとう」で彼は「泣きすぎ」と笑っていた。上着をハンガーにかけると目の前には湯気が立ち上ったココアが置かれて、そのココアに一口つけると甘い糖分が身体に沁みて
身体の中から一気に暖かくなる。
界人くんが家に置いていった帽子にも気づき、笑っていて掛けてくれたタオルケットに顔を埋めながら涙が止まるのを待っている途中に右側のソファーが沈んだ。
きっと、彼がソファーに座ったのだと思う。
タオルケットを剥ぎ、彼を見ると彼は優しい顔で私を見ていた。大きな手で頭をぐしゃぐしゃっと撫でて「何があったの?」と聞いてくれた。
テレビもついていない。聞こえるのはエアコンの音だけ。大きなソファーに密着して座り、界人くんの手の温もりを頭で感じながら私は今日あった出来事を話した。
作った曲が全て没になってしまったこと、少し小馬鹿にされたこと、あの時の表情、周りの雰囲気、みんなが敵に感じた空間、貶されたこと。
それで会いたくなって来てしまったこと。全て言った。
界人くんは表情をコロコロ変えながら聞いてくれて、聞き終えるとタオルケットごと私を抱きしめた。タオルケットのせいでわたしは腕が回せなかったけど
界人くんの温かさを一方的に味わえるからと思ってされるがまま。それでも良かった。
「界人くん、っ、」
界人「なぁに」
「どうしよう、っ、わたし、っ」
界人「辛いよね、ホントに頑張ってて偉いよ。」
界人くんの胸の中で蹲るようにして泣き続けた。徐々に抱きしめる力が強くなっていって、それにすら安心感を覚える。
界人「その人、また作り直して出しに行くの?」
「うっ、ん」
界人「そっか、それでダメならもうこっちから断っちゃえ。対価はあるとはいえ粗末に扱いすぎだし、事務所から言ってもらえばわかってくれる。絶対」
「絶対?」
界人「絶対」
「もうちょっと、頑張るよ。っ、それでダメなら、考える。っ」
界人「うん、偉い。」
.
189人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
(名前)(プロフ) - はじめまして。コメント失礼いたします。Twitterにてパスワードを記載していただいてるとのことですが、Twitterの垢がわかりません。教えて頂くことは可能でしょうか? (3月24日 21時) (レス) id: c73f4a9637 (このIDを非表示/違反報告)
にむ(プロフ) - しーさん» 気づくの遅れてすみません🙇🏻♀️Twitterの固ツイにパスワード貼ってるので良かったら🙇🏻♀️ (2月25日 21時) (レス) id: d177642b92 (このIDを非表示/違反報告)
しー(プロフ) - こんばんは、コメント失礼致します。他の作品もぜひ読ませて頂きたいのですが、パスワードをお伺いすることはできますでしょうか、、。 (2月5日 22時) (レス) id: e0d56893a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:にむ | 作成日時:2023年12月29日 23時