21.上書き ページ21
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「痛いから止まって」
少し前ならこの状況に感謝までしてたはずだけど、あの日から一切喜びの感情が湧かなくなった。
弾「あんくらい自分でどうにかしろ。」
「……ありがとう」
弾「……はぁ。早く帰るぞ。」
また腕を取られてズカズカと歩き進まれる。だからそれが痛いって言ってるのに。
また振りほどいて止まると弾は「んだよさっきから」心底面倒くさそうに頭をかいていた。
もう抵抗をやめて弾にされるがまま。無言が気まずすぎて思わず手を振りほどいて立ち止まった。
「こういうのあす花さんだけにしなよ」
そういうと弾はまるで待ってましたと言わんばかりの勢いで、「そういうんじゃねぇから!」と否定してくる。
「弾」
弾「なに」
「花丸上げあってるのはよく屋上で見るから知ってるよ。お互いを鼓舞し合ってるのも知ってるよ。聞いてたから」
弾「……」
「私は応援するよ。でも頭の片隅にブルーミーのことを置いといて。」
弾「わかってる」
「メンバーの事もね?」
弾「あぁ。」
涙が出そうだった。
弾はあす花さんのことを大事に思っていて、私はただのメンバー。あす花さんのよりも長い時間を過ごしていたのに結局弾の心を掴んだのはあす花さんだった。
すると
成瀬「弾!はやいよ!」
「なる、」
成瀬「あれ?何してんの?」
弾「こいつがナンパされてたから俺が助けただけ。他の奴らは」
成瀬「銭湯寄って帰るって。」
弾「じゃあ俺まだ走るから、Aと帰って。」
「え?ひとりでい____」
弾「手、震えてんだろ」
小刻みに震えた手をなるに取られた。「もう暗いし僕と帰ろっか。」なるのその声色と笑顔でちょっとだけ元気が出た。
走っていく弾の背中を見ながら切なさを味わう。さっきまで弾に掴まれていた手はなるに上書きされていた。
「ごめんね、ランニング中だったよね」
成瀬「この一周で終わるつもりだったしいいよ。Aと話したかったしさ!」
「笑、ありがと」
なるは歩幅を私に合わせてくれて、弾とはまたひとつ違う優しさを感じた。
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にむ(プロフ) - ぺんさん» ぺんさん🔆コメントありがとうございます💗完結までどうかよろしくお願いします👍🏻👍🏻 (2023年2月9日 1時) (レス) @page46 id: d177642b92 (このIDを非表示/違反報告)
ぺん(プロフ) - これからも楽しみにしています!🤍🤍 (2023年2月7日 18時) (レス) @page46 id: 9c62d8b35d (このIDを非表示/違反報告)
にむ(プロフ) - しのさん» そんな嬉しい言葉ありますか😭😭💖ありがとうございます💗💗💗💗 (2023年2月1日 16時) (レス) id: d177642b92 (このIDを非表示/違反報告)
にむ(プロフ) - ちなさん» ちなさん!コメントありがとうございます🔆そう言っていただけて嬉しいです😭 (2023年2月1日 16時) (レス) id: d177642b92 (このIDを非表示/違反報告)
しの(プロフ) - 心理描写、行動描写が丁寧で、グッと作品に引き込まれます。今1番好きな作品です。丁寧に作品を作ってくださってありがとうございます! (2023年1月31日 8時) (レス) id: 4fcf22d877 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にむ | 作成日時:2023年1月3日 22時