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きっと私はどうにかしてしまったんだろう。
お酒のせい？いや元々か。こんなの夢に決まってる。
そうだ！明晰夢、ってやつ。前テレビで見た。どこかのアイドルが「僕夢操れるんですよ！」とか意味のわからない事を言っていたのを思い出す。
多分今それ。夢って自覚してる夢なんだ、きっと。
「 えっと…あなたは、だれ？ 」
「 俺、タイガって言います。さっき君が言ってたヴァンパイアで間違いないんだけど… 」
「 さっきからなに言ってんの？…不法侵入ですよ 」
「 不法侵入もなにも人間じゃないから！ 」
なんで人間でもない謎の男と話せてんの。
え、もしかして特異体質ってやつ？見えちゃいけないもん見えてるよね、確実に。
瞳をぱちくりさせる…自称吸血鬼、のタイガくん。
「 多分…お姉さんは見えちゃうタイプなんだろうね 」
「 はあ… 」
「 んで！俺お姉さんに…その、一目惚れ？しちゃった 」
「 …え？ 」
おかしい事言った？ みたいな顔しないでよ。
もう今起きてること全部おかしいから！
しかも…夢じゃないし。
先程まで赤かった瞳は赤黒く少しは人間らしい瞳になったかなあ、ぐらいの感じ。
「 お姉さん、名前は？ 」
「 Aですけど… 」
「 Aちゃん！よろしくね！」
よろしくね！じゃないのよ。
少し引き気味の私をよそににこにこしながら正座して私に向かい合ってるタイガくん。
いや、かわいい。ちょっとかわいい。
整った顔のおかげだろうか、それとも少し高い声のおかげだろうか、いいやそれとも…
「 俺の事、信じられない？ 」
「 いやそりゃあ、まあ… 」
「 うーん…あ！そうだ、俺の手触ってみて？ 」
ぴょこ、と出された白くて細長い綺麗な手。
このまま触れたら消えてしまいそうなくらい。
妖怪の類だから消えてもおかしくない、か。
このまま夢に見た、魔界とやらに連れてかれる…？！
「 あ！大丈夫、怖がらないで 」
「 怖がらないでって無理だよ… 」
「 あそっか！んじゃあAちゃんの手触っていい？ 」
こくこくと小さく頷くと、小刻みに震えたその綺麗な手が私のぎゅっと握った拳に触れる。
冷たい手。暑い夏には丁度いいくらいだけど、やっぱり人間じゃないから冷たいのかな。
私の手に触れると、あったかいね、と微笑むタイガくんのその笑顔にドキッとする。
「 ねえ、Aちゃん。俺の話聞いてくれる…？ 」
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作者名：ぴあまる | 作成日時：2020年8月12日 4時
