Candy Box (ページ4)

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『ミノ先輩…』

『う、ん？』

『人気あるよね、女子に』

『…あー、そうだね』

春は特に、新入生が先輩を見てキャーキャーと騒いでいる。わたしも去年初めて見たときはモデルかと思うくらいのスタイルに驚いた。

ふと視線が外れ、机の上にテミンくんの視線が落ちた。

長い睫毛。白い肌。綺麗な鼻筋。

わたしはミノ先輩以上に、テミンくんを初めて見たときの方が驚いたけれど。

綺麗な顔だなあって思ってたら、優しくて、努力家で。クラスの中でもなくてはならないような存在で。

知らない間に惹かれてて、気がついたらもう半年くらい片思いをしてる。

『…テミンくん？』

落ちた視線は、戻ってこない。
固まったように動かないテミンくんを呼べば、再び視線が交わった。

『Aちゃんはさ、好きなの？あいつのこと』

『…え！あははっ！ミノ先輩はわたしの友達の彼氏だよ？まあかっこいいなあとは思うけど…』

真面目な顔をして何を言うのかと思えば…ものすごく拍子抜けしてしまった。

『そうなの？付き合ってるって、聞いたことあるんだけど』

『え？うそー…誰だろう、そんなこと言ったの…』

付き合ったことも、好きになったこともないのに。

『…いるの？』

『うん？』

『彼氏』

『…ううん。いない』

突然、どうしたんだろう。
悲しいことに、わたしの人生の中でわたしの恋が叶ったことはない。

だから、彼氏ができたことなんて、ない。

『テミンくんは…？』

『彼女？いないよ。』

下校を促すチャイムがなって、テミンくんは窓の外に視線を移した。

『好きな人はいるけど』

帰らないと、とシャーペンを片付けていたとき。

聞こえた声に、顔を上げる。
……やっぱり、いるんだ。

テミンくんだもんね、いないはずないよ。

靴箱までの道すがら、頭の中にテミンくんの言葉が反芻される。
誰だろう。やっぱり前から噂のあるダンス部のあの子？
それとも、学年1かわいいバスケ部のあの子？

叶わないって思ってたけど…
いざこうして分かるとすごく苦しい。

胸が、押しつぶされそうだ。

『ねえ…テミンくん。好きな人って、なに部の子？』

現実を知って、諦めよう。
もっともっと好きになってしまわないように。

テミンくんに話しかけて迷惑をかけてしまわないように。

『サッカー部のマネの女の子』