19.例の音楽室へ ページ21
｢すげえな｣
ぼそっと、呟いた声。本気で感心したような。
｢俺なんてどこでもいーもん。レベル高いとこでホオリについて知りたいってだけ｣
ハハ、って乾いた笑い。
そうやって自分を卑下するの、癖になってるよね。
｢上代文学なんて奈良時代より前から、ずーっと前から続いてきた歴史でしょ？それを学べるってすごいじゃん｣
｢そうかな｣
｢そうだよ！逆に大学はどこでもいいって思えるくらい夢中になれるのっていいな。私つい偏差値で決めちゃうとこあるから｣
他の大学にも同じような研究内容で出来るとこあったけど、秒で蹴ったし。
だから純粋に、これが学びたい！って気持ちを優先して大学を選ぶ人は尊敬する。
｢……Aには敵わないな｣
しょうがないなぁとでも言うような穏やかな笑みをこぼす。心に染み入るような優しい笑顔に、胸が高鳴るのを感じた。
敵わないのはこっちだよ。
ってのは、もう言えない。
｢今日はなに勉強するの！｣
精一杯明るい声を出したら、なるせくんがこっちをチラって見て微笑んだ。
ほっとして泣いてしまうくらいの、優しく溶けてしまいそうな甘い顔。
｢きょーは古文！おれ私文だから数学はやんない｣
てへって拳をグーにして顔の横に作ってる。かわいい。かわいすぎて女の子みたい。
私より百倍可愛いのはたしか。この前めいちゃんにも｢なるせの方が可愛いよな！｣って言われたし。……ムカつくから後でめいちゃんのポテチ勝手に食べよ。
｢Aは生物？｣
めいちゃんへの復讐劇を考えていたら、机の上に置いた生物の教科書を見てなるせくんがそう言った。
｢そうだね……さっきの話ですごいやる気出たから生物やりたいかも｣
｢お、俺がモチベになれた？うれしー｣
ぷぷぷって嬉しそうに笑ってる。私も幸せな気持ちで笑い合っていたら、教室のドアをトントンってノックする音が聞こえた。
｢なるせ……と、Aちゃんだ｣
そこにいたのはあらきさんだった。1年オーストラリアに留学して、その分1年多くここにいる事になったあらきさん。だから1個年上だけど今は同級生。
｢勉強やってんの？音楽室移動すれば？今はめいちゃんもいるし気分転換にもなるっしょ｣
音楽室って、あの音楽室？私が行ってもいいのかな。
オロオロしてたら、なるせくんがこっちを見た。
｢Aはいいよ。Aだけ特別｣
そういうこと言うから、胸が苦しくなるんだよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かとを74(プロフ) - 私 専用 誘拐犯の続編も気になりますし、正直この作品も素敵なのでっ続けてほしいです。 (4月5日 17時) (
レス) @page23 id: e7ab028975 (このIDを非表示/違反報告)
h - もし良ければこのお話を続けて頂きたいです (4月4日 2時) (レス) @page23 id: 721a3011a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鏡花 | 作成日時：2024年2月10日 11時
