11.過去 ページ13
｢ほんとに聞くの？｣
｢うん｣
｢いやー、知り合いに聞かれるってやっぱ、緊張する……｣
｢じゃあなんで教えたのよ｣
微妙な顔して俯くなるせくんにそう言ったら、表情が曇った。
｢あのね……話すと長くなるんだけど｣
｢うん？｣
目で話を促したら、意を決したように口を開いた。
まず、俺が初めて投稿したのは高1の時。褒めてくれるコメントが多くて、楽しみながらずっと動画投稿してたんだけど……去年、クラスの奴にバレちゃって。イキってるとか言われた。それをクラスの人ほとんどにバラして、みんな聞こえるようにいろいろ言ってきて。ラッパーとかラップ好きな人ってDQN多いよね、とか他人に迷惑かけるタイプ、とか。
気にしないのはむりだったんだよね。精神的にもキツい日が多くて、学校も休みがちになっちゃった。
そしたらあらきさんが心配してくれて。あらきさんは趣味で作詞もやってるからそれに集中するために音楽室貸切にしてるんだけど。
なるせも来ていいよ、って、言ってくれた。
好きに歌っていいよって。
そこまで言って、なるせくんがこっちを見て笑った。
やっぱあらきさんはかっこいいね、って。
その笑顔に、胸が苦しくなる。なるせくんをここまで傷つけたその人たちがどうしても許せない。
｢俺さ、去年の冬くらいのとき音楽室に1回行ってみたの。ラップは、いつ廊下に人が通るか分からないから出来なかったけど、リリック考えてて｣
｢うん｣
｢集中してたから人が入ってきたのに気づかなかった。それって歌詞？って声がして、顔を上げたらAがいた｣
｢えっ、わたし？｣
びっくりした！まさか私が登場するとは思わなかった。
全神経が、なるせくんの言葉に集中する。
｢声が出なくてつい頷いた後に、またなんか言われるって焦った。なのに、Aは｢へえー！すごい、かっこいいね｣って、ほんとに感心したみたいに言ってくれて。俺すごい救われた｣
そんなことあったっけ。
記憶を辿ってみても、やっぱり思い出せない。
｢覚えてない……｣
｢やっぱり。そういうね、覚えてないくらいいつも通りのこと言ってたんだろうね。気づかないうちに今まで他人を救ってきたんだよ、Aは｣
そんなすごいもんじゃないのに。
私、そんなにいい子じゃないよ。
｢だから、今度は俺の番｣
｢え？｣
｢俺、絶対守るから｣
｢なに、が……｣
｢Aの秘密、絶対守り通す｣
なるせくんの目に、光が灯った気がした。
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かとを74(プロフ) - 私 専用 誘拐犯の続編も気になりますし、正直この作品も素敵なのでっ続けてほしいです。 (4月5日 17時) (
レス) @page23 id: e7ab028975 (このIDを非表示/違反報告)
h - もし良ければこのお話を続けて頂きたいです (4月4日 2時) (レス) @page23 id: 721a3011a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鏡花 | 作成日時：2024年2月10日 11時
