01.最悪 ページ2
はじめて見た時は、何が何だか分からなかった。自分の知らない、新世界を覗き見てしまったかのような感覚。
知ってはいけない、何かを知ってしまった。
まあそんな、大袈裟な事でもないんだけどね。私にとっては、人生を左右する大きな分岐点だった。
だからこそ、この事は誰にも知られてはいけないって誓ったんだ。
それなのに。
｢A？何見てんの？｣
学校から遠い、だけど駅に近いアニメイトで新刊を探していたら、すぐそばで聞こえる耳慣れた声。
恐る恐る、振り返る。
私がずっと、恐れていた事が起きてしまった。
｢な、なるせ、くん｣
｢うん。なるせだよ｣
それが何？とでも言いたげな顔でこっちを見てくる。同じクラスの、なるせくん。
下の名前で呼ぶほど親しい関係でもないから、私はなるせくんって呼んでるんだけど。
なるせくんは出会った人全員、下の名前で呼んでるみたいだから、初対面からずっとAって呼ばれてる。
｢おーい、A？｣
｢はい何でしょうか、なるせくん｣
｢うーん？｣
｢え、っと、なに？｣
｢今なに隠した？｣
なるせくんが、私が背中の後ろでそっと『鯛代くん、君ってやつは。』を棚に置いたのを目敏く見つけた。
まずい。1巻とか2巻ならまだしも、4巻は帯からもう絶対に見られてはいけない描写が描かれている。
どうしようどうしよう。
逃げ道が見つからないよ。
｢これってー｣
ひょいっと1歩踏み出して、私が置いたばかりの漫画を手にする。
終わった……と天を仰いで目を瞑る。
薄らと目を開けると、じぃーっと表紙を見つめるなるせくんの姿が見えた。
もう、なんとでも言ってください。
｢びーえる？｣
｢はい……はい……そうです……｣
そう、私が踏み出した世界はボー イズラブ。
小学生の時にブックオフで見つけて以来、家の本棚にはB L漫画がずらりと並ぶようになった。
お母さんには秘密にしてないから、家で隠すことはない。
ベッドの上に広げたままにしてたら、エ ロ本仕舞いなさいーって茶化されるし。
お父さんにも多分バレてるだろうな。面と向かって聞くのは気まずいから憶測でしかないけど、リビングの床に置きっぱなしにしてる事も珍しくないし。
だからそう、私がひた隠しにしてるのは外の人間だけ。
｢Aってそういうの好きなんだ。なんか意外かも｣
表紙、背表紙、裏表紙を舐め回すように見ながらそう言った。
ああ、もう、やめてくれ。
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かとを74(プロフ) - 私 専用 誘拐犯の続編も気になりますし、正直この作品も素敵なのでっ続けてほしいです。 (4月5日 17時) (
レス) @page23 id: e7ab028975 (このIDを非表示/違反報告)
h - もし良ければこのお話を続けて頂きたいです (4月4日 2時) (レス) @page23 id: 721a3011a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鏡花 | 作成日時：2024年2月10日 11時
