00.アンチューサの花言葉 ページ1
｢あ、Aじゃん｣
3階の、隅っこ。音楽室にやっぱりなるせくんはいた。
私を見て、嬉しそうに笑う。
よくそんな顔できるね。
全部、嘘だったくせに。
愛想笑いなんてするつもりもなくて、そんな私の様子に疑問を抱いたのか、不思議そうに首を傾げた。
｢どした？なんか嫌なことでもあった？｣
｢自分がいちばん、知ってるんじゃないの｣
｢え？｣
｢とぼけないで！｣
思ったより、大きな声が出た。なるせくんはびっくりした様子でただこっちを見つめてる。
｢私言ったよね！誰にも言わないでって言ったよね！｣
｢待ってA、何のこと？｣
｢……なるせくんなんか、｣
｢A？｣
｢なるせくんなんか、私の世界にいらない！｣
涙でぐちゃぐちゃになった視界で、なるせくんが私に触れようとしていた手を止めた。
行き場のなくした手が、落ちる。
はっきり見えないから何とも言えないけど、
なるせくんの目が薄らと濡れて、鼻はピクっと揺れてあたかも傷ついたかのような表情をしていた。
なに、その顔。
傷ついたのはこっちだよ。
信じてたのに。心から信じてたのに、裏切られた私の気持ち分かる？
分かるなら、被害者ヅラしないで。
ばか、って捨て台詞がこぼれそうになるけど、なるせくんの悲しそうな目を見たらどうしても喉から言葉が出ていかなくて、唇を噛みながら踵を返す。
ズンズンと歩き続けても、何も話しかけてこないし、追いかけても来ない。
やっぱり、そうなんだね。なるせくんだったんだ。
拭っても拭っても止まらない涙を、両手でパッと払う。それでも次から次へと、ボロボロ涙がこぼれていく。
ああ、私こんなになるせくんのこと好きだったんだ。
迷惑って言われても、めいちゃんと付き合えばってあしらわれても、絶対に報われないって知っても、ずっと諦められなかった。
いや、諦めようとしても好きをやめることは出来なかった。
だってこんな素敵な人、他にいないって思ったから。
こんなの沼にハマるしかないって、リアコ製造機すぎるって。
全部全部、私の独り善がりだったのかな。
2年の女子トイレに入って、いちばん端っこの個室でやっぱり泣いた。
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かとを74(プロフ) - 私 専用 誘拐犯の続編も気になりますし、正直この作品も素敵なのでっ続けてほしいです。 (4月5日 17時) (
レス) @page23 id: e7ab028975 (このIDを非表示/違反報告)
h - もし良ければこのお話を続けて頂きたいです (4月4日 2時) (レス) @page23 id: 721a3011a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鏡花 | 作成日時：2024年2月10日 11時
