遠い花の香り (ページ49)

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49―増田side― ページ49

ふいに止まったままだったエレベーターが上昇を始め、俺たちは体を離した。

増「急にごめん……あっ、Aちゃんに渡すものがあったんだ」

我に返った俺は急に自分のした行動が恥ずかしくなって、ごまかすようにポケットからチェーンの付いたミント色のクマのマスコットを取り出した。

「わぁ～！すごい可愛い！！」

Aちゃんに渡すと満面の笑みを浮かべて可愛いと言ってくれている。

俺のチョイス間違ってなかったと、こっちまで笑顔になる。

増「鍵何も付けてなかったでしょ？無くさないように大きいやつが目立っていいかと思って」

「ありがとう！これならすぐ見つかるしいいよ！！」

やがてエレベーターは二階に着き、扉が開くと目の前には小山が立っていた。

小「あれ？二人とも乗ってたんだ。遅いから迎えに行こうかと思ってたんだ」

それはAちゃんと俺が二人でいるのが気になってってこと？

まさか本当に昨日一線を越えたの？

だとしたらAちゃんはなんで抵抗しなかった？？

増「わざわざ迎えに？随分、心配症だな(笑)」

小山をからかいながら先にエレベーターを降りて、ざわついた気持ちをどうするべきか思考をめぐらせる。

少し後ろを歩いているAちゃんには聞こえないくらいの声で小山にかまをかけた。

増「さっき、エレベーターの中で聞いちゃったんだよね」

一瞬、小山が動揺したのが分かった。

やっぱりそうなのか……

小「その事なんだけど……後で時間ある？ゆっくり話すわ」

増「仕事終わってからな」

短く答えてから、俺はいつも通りのテンションで話題を変えた。