しかめっ面 ページ25
「夢」
夢だった。息が荒くなる。呼吸を整えながら前髪から髪をかきあげる。硬直してしまって固い動きしかできない。震える体を抑えて私はゆっくり立ち上がる。自分の部屋にある鏡を覗けば瞼を腫らして窶れた顔の自分がいた。
お葬式などがあるからまた少し帰るまで長引いてしまった。お葬式の次の日に帰ることになった。お見舞いには侑は一年に一度ほどは来ていた。
夢なんだけれど、衝撃的すぎてあまりにも現実的すぎて心臓の鼓動が早かった。どくん、どくん、といつもより早く動く鼓動。侑が死んじゃったら。大切な人がふたりもいなくなったら。
「どう、しよう」
いつしかこの言葉は口癖になっていた。
本当は今日帰るはずだった。お葬式は明日だ。私は部屋を出た。遺品整理をしなければならない。翔太郎と、お父さんに任せっきり。お母さんの部屋に言った。話し声が聞こえる。ドアは開いていて見えないところに立っていた。
私はやっぱり無理だ、と逃げ出して自分の部屋に戻った。すると携帯がなっている。京治かと思い携帯をとる。携帯に表記されているのは京治ではなく侑だった。
応答、というとこを押した。
『もしもし』
久々に声を聞いた。あ、生きてる、なんて失礼なこと思ってもよかったなんて安堵のため息。目頭が熱くなる。最近色々あるから情緒不安定なのだろう。侑はもしもし、と繰り返す。
「ごめん」
『明後日帰ってくるんやろ』
「うん。」
『何時頃』
相変わらず無愛想な電話。昔と大違い。
「夜の、10時かな」
『迎えに行ってもええ?』
「やだ」
私が冗談交じりにそう言うと侑は『え、』と声を漏らす。
「嘘だよ。待ってて」
『ほんま、むかつく』
「知ってる」
久しぶりに零れた笑い。
『あ、笑った』
「私はあなたと違って笑うから」
『そういうとこが好き』
「へ」
『いつも笑ってくれるとこが好き。やから無理せんでもええから帰ってきたらでもええからいっぱい頼ってな』
急に優しくなんなよ。急に好きとか言うなよ。
「ありがとう」
泣きそうになるじゃんか。
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ナッポレオン(プロフ) - とても素敵な作品をありがとうございました! (2018年12月22日 23時) (レス) id: 8e13bd886f (このIDを非表示/違反報告)
萌々子(プロフ) - チョーク*さん» コメントありがとうございます!!すごく嬉しいです!涙が出るくらいに!応援していただきありがとうございます!完結いたしました!楽しみにしてくださってたのに申し訳ないです!評価押して下さりありがとうございます!! (2018年5月17日 23時) (レス) id: 7e27c0b7c2 (このIDを非表示/違反報告)
チョーク*(プロフ) - この作品本当に大好きです…!こんなお話は余り見ないし、素敵な作品は久しぶりなので「ヤバいヤバい!」ってつい言いながら見てしまいます(笑)評価ボタンも毎回押しては無効だったり…とにかく大好きです!自分のペースで大丈夫ですよ、気ままに更新待っております^^* (2018年5月17日 16時) (レス) id: e74d4ea6bf (このIDを非表示/違反報告)
萌々子(プロフ) - るかちさん» ありがとうございます!!めちゃくちゃ嬉しいです!!毎回押してくれるなんて!涙が出ますよ!!楽しみにしててください!頑張ります! (2018年5月16日 7時) (レス) id: 7e27c0b7c2 (このIDを非表示/違反報告)
るかち(プロフ) - 1話更新されるたびに「あああ尊い」ってなりながら毎回投票済みの評価ボタンを押してしまいます。これからも楽しみにしてます。いつも応援してます! (2018年5月15日 23時) (レス) id: 2cef0ad450 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:穀海* | 作成日時:2018年5月4日 21時