嘘でできてる。【宮侑】 (ページ49)

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日が暮れて侑に手を振った。その手が震えて今にも窒息しそうだった。気づかないうちに涙があふれて侑は『げ、』と声を上げて私のことを抱きしめた。

「いつまで泣いとんの。春高で会えるやろ」

隣に立つ雪絵さんも苦笑している。侑は私の頭を撫でてなにか吹っ切れたように『よし』と口にした。侑は私を離した。

「もう平気や。泣いてばっかだとぶすになってまうぞ」

「侑う、早くう」

愛世さんはまだ諦めていないのか侑の手を取った。侑は手を勢いよく払い除けて普通の顔、何も無かったような顔をして歩き始めた。寂しいな。なんて考えながら私はかかとを返した。腫れぼったい目をこすった。

「さあ、てとAの寄りも戻ったことだしみんなで元気に明るく行きますか」

木葉さんがそう口にした。

「そうだな。」

「いやあ、まさか高校NO.1セッターと関わりがあるとはなあ。まさかあんなラブラブで」

「ちょっと、」

かおりさんが木葉さんの頭を軽く叩いた。侑のことを思い出したらまた溢れ出しそうになる涙を抑えてあっさりとした別れを封じる。またあんなことがあったら。

でもきっともう起きないよ。

「京治、ありがとうね」

「Aが幸せならそれでいいよ」

京治の笑顔はいつにも増して寂しそうだった。そんな顔は見たくないよ、と口にすれば分かっちゃったんだとイタズラっ子のような顔つきで笑った。やっぱりどこか切ない。

もう嘘はない。

「私は本当で出来てる」

「……え？」

「ううん、何でもない」

自分に嘘はない。

そう信じたい。

彼にももう嘘はない。

幸せになれてよかったね。ってきっと誰よりも喜んでくれてたのは、京治だったりしてね。そんなこときっとありえないけれど。もしかしたらそうかもしれない。

京治がいなかったらきっと今はないかもしれない。

「ありがとう」

「どういたしまして」

fin