嘘でできてる。【宮侑】 (ページ46)

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耐えきれなくなってAを抱きしめた。Aがどんな顔をしているか知らないけれど、俺の背中をぎゅっと抱きしめた。この感じは中学生の時と一緒。中学ん時もこんな感じでお互いのことを受け止めて過ごしてきた。

「なんでそんなに怒ってるの」

「怒ってない」

ぶっきらぼうに返事を返すとAはそっか、と言葉を残す。俺はAの肩に顔をうずめる。Aの温もりがゆっくりと伝わってくるのが分かった。

「疲れちゃったの？」

「いつも疲れとるわ」

「……バレー好きなのに」

Aを強く抱き締めた。涙が出てきそうで必死にこらえる。鼻をすするとAは少し笑う。泣けばいいじゃん、ってそういった。

「侑といると、幸せな気分」

Aがすっ、と体を離した。

「何言うてんのや。」

俺も離す。幸せなのはこっちだ。Aの声が聞こえるだけ嬉しかった。あれだけ避けられれば多少のことでも嬉しくなる。あの喧嘩の発端はやはり愛世さんだった。どちらも勘違いということですまして終わらせた。

「好きや」

「知ってる」

Aの唇に一瞬だけキスをする。Aは唇を離すとまだ物欲しそうな顔で俺を見つめた。俺はその顔に負けて彼女の唇と唇を重ねて舌を絡ませた。彼女は俺を抱きしめる。ここでこんなことやったらダメってわかってるのに。

「これ以上は無理や」

息苦しくなって情けなくも自分から離すとAは耳を真っ赤にして俺の胸にかおをうずめる。Aは俺を抱きしめたまま離さない。Aを抱き抱えて歩き出す。マネージャーの部屋までゆっくり行くことにした。

一緒にいたいからと寄り道するたび、Aは瞼を重そうにした。次第に瞬きの回数も速さも減りAの寝息が耳を通る。Aは力が抜けていて先程よりも重く感じるけれど普通の女の子としたらかなり軽い方だと思った。

マネージャーの部屋を開けるとニヤニヤと顔を緩ませる先輩マネージャーさんたちに、愛世さん。俺はAの布団にAを寝転がせようとした。

「A、起きろや」

離れてくれないAを起こす。

「嫌だ」

はっきりとした口調。

「起きとるやん」

「うん」

Aの額にキスをして部屋を出た。