嘘でできてる。【宮侑】 (ページ45)

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治と明日の打ち合わせをしてからAを探そうと思った。話し終わって気づいたらAはもうどこにもいなかった。待ってくれてるかな、とは思ったもののどこにもおらん。

「A知らん？」

「より戻したのか。おめでとう。多分あっちにいるぞ」

岩泉さんにそういわれ頭を下げて俺は指のさされた方向に歩いていく。でもどこにもいないくてどないしよ、と呟く。Aなら多分もう自室に戻ったんやろか。

「侑ぅ、Aちゃんと別れたんだってぇ？」

愛世さんが俺に問いかけた。俺はムカついていつもよりも冷たく『別れてないです』と答えた。すると愛世さんは馬鹿にしたような顔つきで俺に近づく。すると俺の腰に腕を絡ませる。

「ねえ、別れてよ。私の事好きでしょう？」

愛世さんはあざとい。俺には響かんけどな。

「好きやないです。どいてください」

「ねえ、」

「しつこいです」

イライラましてくる。愛世さんはそれにつれて俺にベタベタと引っ付いてくる。

「しつこいって言ってんやろ！！」

愛世さんを思い切り突き放す。愛世さんは目に涙を貯めている。ほろほろと涙が愛世さんの頬を伝った。まだ苛立ちが収まらない。

「あんたA傷つけたんやろ。だったらもうこんなことすんなや」

いつの間にか敬語が消えた。

「ほんまやめろ」

俺は愛世さんの横を通る。頭に血が上る。少し歩いた先で壁を思い切り叩く。思考が回らない。なんか知らんけどイライラする。誰かに話しかけられるとイライラする。収まらない。どうしようもない。

Aがいない。

今までそれでも平気だったのに、少しいないだけでイライラする。Aの顔を思い浮かべるだけで恋しくなった。Aがいないことに対して自分は怒っているのかそれとも愛世さんが俺にベタベタしてくるからか。きっとどちらも正解。

俺が地団駄を踏むと後から声がする。

「侑……？」

「うっさい、なんや」

苛立ったままのせいさ思わず言葉がきつくなる。

「何怒ってるの」

「怒ってない」

よく分からないけどこらえたものがぐっと溢れる気持ちだった。どうしてももう抑えきれない感情が今にも爆発しそうな気持ち。

「Aのせいや」

俺がそう発した言葉にAは答えた。

「そう。じゃあ行くね」

Aはすました顔で歩き出す。

するとAは振り返り言葉を残す。

「本当は抱きしめて欲しいんでしょう？」