嘘でできてる。【宮侑】 (ページ42)

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宮侑side

もう、何もすることない。Aのこと心配せんでもええ、愛世さんと仲良くやってもええ。でも俺が求めてんのとは違う。俺の求めてるのはそんなんやない。うすっぺらな愛やない。

愛世さんと付き合うったって長くは続かないし、俺は興味ない。今まで好きになった人は1人だけ。俺がこの人がいいって思ったんは1人だけ。

何億人の中の1人。

どんだけ性格が良くて可愛いモデルよりも、Aの方が好きやった。なんでかって聞かれると理由はわからない。俺以外わからんのに俺もわからない。なんでかなんて求めてない。

もう、終わったんやし。

「考えなあかん訳やない」

苦しいなあ。

喉が苦しい。

「どないしよ」

「侑…………！！」

振り返りたくなんてない。酷く震えた声。俺は振り返らずにずっと前だけ見てた。

「……」

答えない俺のせいか後ろのやつは黙った。

「宮くん、」

少しだけ胸が苦しい。

「あなたがほしいです」

冷たい風が頬をさすった。頬を伝う鬱陶しい何かが地面に落ちた。後ろのやつは『ただ、それだけ』っていってかかとを返す音を鳴らした。俺は引き止めるなんてできなかった。強がったから。

「宮くんと付き合いたいです」

ちょっとだけ後ろのやつの顔を見ると泣き始めているのがわかった。苦しくて仕方なかった。大事な人が泣いてるのは見ていられない。ぎゅっと喉を鷲掴みにされている気分。嗚咽を響かせる後ろのやつ。

「うっさい。黙れや」

冷たくなんかじゃない。そう返した。

「好きなの……！」

でた。喧嘩した時いつもでる後ろのやつのくせ。怒ってるわけじゃない強調してるだけ。わかってほしい気持ちと悔しい気持ちが入り交じった声。

「お前の泣いてるとこ見たないし、聞きたくもないわ」

「……うん。」

鼻をすすった。

「しっかりせな」

「うん」

「付き合ったら泣き止むんか」

「うん」

「そないなことせんでも、付き合うわ」

「うん、うん。うん、」

また泣き出す。

「泣き虫」

俺が後ろのやつの顔を見て、頬を撫でる。ぎゅ、と抱きしめてくる“A”。これ、ずっと離してくれないやつ。抱きしめられたまま俺は歩き出す。Aはずっとくっついて離れない。可愛いのは変わりない。別れたいなんてきっと一生思わない。別れを切り出した時も、本当はそないなこと思ってなかった。