嘘でできてる。【宮侑】 (ページ40)

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宮侑side

最悪やった。Aに別れを切り出してしまえば未練もなくなると思っとった。けど、何も変わらない。否、別れを切り出したことで自分が嫌になった。今更取り消しなんて無理。本当は心の底でAが嫌だって言ってくれるのを期待した。

俺は嘘つき。

Aも嘘つき。

「やっぱ、やめればよかった」

ただそう口にした言葉が通り過ぎた鉄朗さんに聞こえたみたいで黒尾さんがどうした、と話しかけてきた。

「いや、何もないです」

にこりと笑顔を見せて俺は踵を返した。

その時

「お前Aちゃんと別れたんだってな。」

早くも噂が広まっていた。Aが言うはずない。

やから、きっとさっきの一部始終を誰かが見とったんや。俺は少しイラつきながらそうですよ、とぶっきらぼうに返すと鉄朗さんは少しニヤつきながら言った。

「いいのかなあ、赤葦がAちゃん抱きしめてるんだけど。」

「……」

「それでもお前嘘つくのか」

真剣な顔付きになる鉄朗さん。

「……もう俺関係ありまへんから。アヤサカさんは俺のなんでもないです」

「ふーん、そっか。ならみんな安心してAちゃんと話せるな」

「は？」

思わずぴき、と何かに歪が入る音。

「気づいてねえのかよ。Aちゃんと話したいやつはお前が試合やってる時とか見てねえ時しか話せねえから。まあそれがあいつの幸せとは限らないけど。」

鉄朗さんのせいで、そのせいで。少し期待してしまう自分がいる。どうすればいいか分からない。もう何も期待しても無駄やってわかっとる。

だけど。

Aが京治くんと幸せになれんならそれでいい。Aが俺のこと嫌いなってくれればそれでいい。俺なんか眼中に無いAはいつだてっヤキモチを見せてくれなかった。

あんなやつ、なんで付き合ってたんやろ。

ありがとうって小さくしか言えないし、俺のことあんま好きみたいな態度見せんし、他の男と仲良いし、俺と久々にあったちゅうのに喜びじゃなくて怒りを見せたし。俺と同じ空気を吸うのが嫌みたいな態度とられてたのに。

「じゃあな、より戻すなら戻せよー」

「うす」

Aはこれからどうするんやろ。

もう忘れよな。