嘘でできてる。【宮侑】 (ページ38)

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あれ、今思い出すとあの友達の言った通りだった。中学２年の時に私が折れて付き合うことになって次第に堕ちていった。彼の温もりがないとむずむずした。私の手を彼が引いて返ったあの小さな路地裏も、秘密って言って学校帰りに寄ったラーメン屋も。

今じゃ何も必要ない。

変わったのは彼だけじゃない。変わったのは私も同じだ。彼といる時間が特別だった、それが日常になってその日常が崩れた。日常が崩れて特別に戻れると思った。けど、

「浮気か」

その二文字が頭を埋める。

きゅう、と締まる喉を掴みたくなるほどの嫌気がさした。

「A」

ゆっくり振り返れば宮侑が立ってる。

「なに」

冷たく返す。彼の事考えてる自分が嫌い。

「……あんな、俺ら別れよ」

どくん、と胸が跳ねる。

でも、

「元から、自然消滅でしょう。今更彼氏面しないでよ」

「今別れたんや。」

「違う。私は侑と離れてから貴方のこと考えたことなかったし、どうでもよかった。むしろここであえて清々したよ。」

嘘つきだね。

「は」

ほら、見てよ。

「私はこうやって言われるのを待ってた。どうせこの先付き合ったって続くわけがないじゃない。大体白金さんに気が向いて、私なんかどうでも良くなったんでしょう。そんなの分かってる。だから、」

こんなに悲しそうな顔してくれるのは、

「あんたなんか、大嫌い。」

彼だけでしょ。

自分には彼しかいなかった。あの友達もいなくなって、自分は一人だった。それに対して私は甘えていた。たった一人の理解者を失った。

ひとりぼっち。

「元から近づかないで欲しかった。小学６年生の時に初めて話して女ったらしだって思って正解だった。」

そんなこと思ってないくせに。

「……」

黙りこくる侑の胸をどん、とひとつき。

「あんたなんかに会わなきゃよかった。」

嘘つきが嫌いだから。

そうでしょ。

こんな自分に会いたくなかった。

「ごめんな」

初めて彼が泣いた日。

嫌いだ。大嫌いだ。

「……」

自分が嫌いだ。