嘘でできてる。【宮侑】

１２ ページ13

お風呂上がり。暖房の効いた暖かい校舎は薄着でも平気だった。白い半袖の上に灰色のパーカーを羽織り、着替え室のドアを開けた。荷物を持ちながら髪の毛を整える。


前髪とか特に。


「お色気むんむんじゃないっすか？ん？」


ピンク色の髪の毛。


「……誰でしたっけ」


確か先輩だった気がしたものだから私は敬語で喋る。まあ、初対面は敬語だけど。彼は初対面ではない。今日だが、少し会話をした覚えがある。名前が出てこない。


「ひでえ。花巻な、花巻貴大！」


「ああ。ごめんなさい。花巻先輩ですね。覚えときます」


「まあ覚えられても困るがな」


「え、なんで」


顔がひきつる。流石に傷ついた。


「ほら、稲荷崎の宮侑いるだろ？あいつお前と話してるやつにガン飛ばしてくんだよ」


「……じゃあ話したことは秘密ですからね。ちゃんと覚えますから」


「ありがと！」


なんの裏もない笑顔が私を照りつけた。くしゃくしゃの笑顔が私の心にヒビを入れた。









「Aは静かだね」


「まあ、はい」


静かでいたいわけじゃない。うるさくしてもムカつかれるだけだし、かといって優しくしたり、すればいい子ぶってんじゃねえ、って言われる。静かに端っこで眺めてるのが１番安全。


だから勝手に作り上げた私。


「あ、憧れます！」


仁花ちゃんがきらきらと目を輝かせる。


「ありがとう」


やっぱり、上手く笑えない。

１３→←１１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す